88 蜂蜜料理
「ヌッマヌーマ!」
クマールが蜜蠟と蜂蜜を手に入れてすごくご機嫌だ。
今晩の食事を楽しみにしているのが分かる。
まだまだ時間は先だけどさ。
ルナスのリクエストはチーズピザの蜂蜜掛けだったっけ。
俺もそれでいいか。
「これだけ蜂蜜が手に入ったのだから何か作ったりはしないのかね?」
「甘味だから使い道は無数にあるな。まあ……俺はコックって訳じゃないし、趣味の域は出ないけどさ」
さすがに本業の連中と比べると大きく差が開く。
冒険中の娯楽って程度の腕前だ。
「簡単なのだと煮詰めて飴玉とかにしておくとか……豆のペーストにするとかも意外と美味しいんだ」
「ほう……」
「傷薬とかに調合をすると治療効果の増強が狙えたりするけど……」
「それは私に任せてくれれば良いさ」
ルナスは回復魔法が使える。
プリーストのマシュアよりも治療効果は低かったけど、死んだフリと勇者の怒りのコンボで凄い回復をするんだっけ。
そもそも今の俺達の場合、戦闘で怪我をすることの方が希か……より深い所に行った際にどうなるかは判断しかねる状況だけどさ。
ちなみに魔力の回復とかも調合で使えるらしいけど、専門性の高さから俺は簡単なモノまでしか作れない。
「食べ物の方だけで良さそうだな。手持ちの食材だと……ドライフルーツの蜂蜜漬けとか保存が利いて甘みも上がるからおすすめだな」
保存食としてドライフルーツを持ってきた。
これを蜂蜜に混ぜればすぐに出来る。
そのまま漬ければ味が染みて美味しいだろうし、溶け出たドライフルーツの味わいが蜂蜜に混じってより甘みが増す。
「ヌマァ……」
ジュルっとクマールが俺の話を聞いて涎を垂らした。
はいはい。お前に後で作ってやるから楽しみにしてな。
「蜂蜜と言えば蜂蜜酒というモノもあるな」
「あー……そうだな」
蜂蜜を発酵させて作り出す酒だ。
いろんな酒があるんだなと知った時に思ったし、酒場でも人気がある。
「確かこの階層だと、魔物が溜め込んだ結果できあがってしまうコングカクテルの一種が見つかる事があるんだっけ」
コングカクテルってのは猿型の魔物が作る酒が元として名付けられた魔物が作る酒の呼び名だ。
探すのも手だけど俺もルナスも酒は好んで飲むってタイプでは無い。
持ち帰って売るとかを考える程度だなぁ。
クマールに飲ませて良いものじゃない。
「ふふ、君が酒を飲みたいというなら探しても良いぞ?」
「ルナスは先に行きたいんだろ。そもそもこの先にもまだ蜂蜜を手に入れる機会はあるんだし、ここに止まり続ける必要は無いよ」




