86 蜂蜜採取
羽音と把握を頼りに……見つけた。
周囲の植物や魔物等を参考にすると……毒の蜜にはなっていないだろう。確認はするけど。
よし、早速俺は荷物袋から煙り玉の材料を取り出して手持ちの薬草や薬を簡易的に混ぜ合わせて煙り玉を作った。
ジャングルビー用の殺虫と痺れ成分を入れた麻痺毒玉の完成だ。
「リエル、そんな小細工をしなくても君が死んだフリをしていればジャングルビーの群れの中を目にもとまらぬ早業で仕留めて進んで採取してくるぞ?」
飛んでるジャングルビーをルナスが切って進んで行く姿は簡単に想像出来る。
きっと一番早い方法なんだろうけどさ……。
「別にそこまでしなくたって簡単に採取できるんだからやる必要は無いさ」
何でも死んだフリ戦法で行くのもな。
露払いって形でジャングルビーを仕留めてくれるなら助かるけど、無理にする必要は無い。
「そうか……残念だ」
「加減出来ずに巣を切り裂いて蜜が思い切り周囲にはじけ飛びそうだし、そうなったらルナス、蜜塗れになるぞ?」
「ふむ……確かにそれは困りそうだ。結果的に進むのが遅れたら本末転倒だな。ではリエル、任せるぞ」
「ヌマ!」
クマールが今か今かと目をキラキラさせて涎を垂らしている。
そんな顔をされるとやってやりたくなるじゃないか。
「じゃあ行く」
火種で麻痺毒玉に火を入れてジャングルビーの巣の近くにポイッと転がす。
コロコロと麻痺毒玉が転がって行き……ボッ! っと勢いよく煙が充満してジャングルビーの巣とその周囲を煙で埋め尽くす。
「ギィイイイ――」
周辺を飛び回っていたジャングルビー達は次々と毒が回って地面に落ちて転がっていく。
やがて煙が晴れた頃には羽音が随分と少なくなっていた。
他の巣のジャングルビーの羽音が聞こえるだけだ。
「さて、じゃあ必要な分だけ持って行くぞ」
「ヌマ!」
巣へと近づくとトテトテとクマールも付いてくる。
で、巣に俺は手持ちのナイフを突き立てて巣を砕き、蜜が十分染みこんだ巣を砕きながら取り出す。
キラキラと柑橘類のような色合いをした綺麗な蜜蝋が蜂蜜と一緒に出てきた。
「ヌマァー」
だらだらとクマールがその蜜を見て涎を思い切り垂らしている。
「ちょっと待ってろよ、クマール。お前もこの蜜に毒が無いか確認するんだぞ」
少しだけ蜜を味見して毒が無いかの最終確認を行う。
舌がピリッとしたり異変を感じたら毒が混じっている可能性が高まる。
他にも味に変化は無くても幻覚効果なんかがあったりする花などの蜜とかがある事もあるから注意だ。
……うん、問題ないな。




