84 ジャングル
自分の容姿に対して凄い自信だ。
まあそれ位じゃないと勇者なんてやっていられないのかもしれない。
それにルナスが言わんとしている事は分かる。
強いからこそ人気があるって奴。
例えば……ドラークとか良い例なんじゃないか?
あんなでも古参だし、渋い勇者路線でブロマイドが売っていたはず。
割と人気だった覚えがある。
そんなドラークだけど顔は……良く見せる様に工夫しているけど、ハッキリ言ってどこにでもいる三十代冒険者って感じだった。
その点で言えばルナスは条件が特殊だけど、強さという点も加えて人気勇者になれる可能性は大いに秘めている。
ドラークが達成するはずだった依頼をあっさりクリアした事で王宮での評価も上がったそうだし、期待の新星となっているだろう。
更に言えば現地で人質を救い、足早に去っていった様子は……俺があの村の少年だったなら憧れるだろうな。
「君の場合は自己主張すべき時に黙っているのが周囲に認識してもらえない理由だろう。レンジャーとしての修行が理由かもしれんな」
割と図星な所を指摘されたような気がする。
レンジャーってのは解錠に始まり、罠の解除とか索敵を主にして戦闘では弓矢などを使用する。
その特性から奇襲が主な戦闘スタイルになるので目立たないように行動するのが身についてしまっている。
もちろん普通にしゃべったりは出来るけど、レンジャーとしての感覚が目立つなと制止すると言うか……この辺りは適正とか、性分もあると思う。
「君の顔は初対面の印象で悪いとはとても思われない程に整っているのだよ? 覚えて貰えないのはその話術が理由でしかない」
「まあ……そこはレンジャーとして、情報収集の授業とかでね。それでもスキル持ちに比べたら大した事は無いさ」
「文字通り何処かで君が活躍している所を見せれば人気も出るだろう。強さというのは人気の要素でもあるんだ。少なくとも君は顔では悪印象は持たれん」
「ヌマー」
うーん……俺とクマールのブロマイドが仮に出たとして人気が出る事があるのかねー。
なんて思いながら俺達は迷宮をどんどん進んで行った。
当然のことながら迷宮内でも野宿は行われるぞ。
ちょうど良さそうな小部屋とか行き止まりでテントを張ったりして休む。
迷宮は不思議な空間でもあるので焚き火を焚いても息が出来るし風も通っている。
そうして迷宮内を潜って……16階・密林地形の迷宮に差し掛かった。
「ヌマ……ヌマー!」
くんくんとクマールが鼻を鳴らして目をキラキラとさせ始める。
えーっとこの階層はジャングルビーという昆虫型の魔物が生息している階層だ。
「ヌマ! ヌマヌマ!」
「どうしたクマール?」
「ヌマ!」
こっち! こっちから良い匂いがするよ! とばかりにクマールが迷宮内を指し示す。
当然のことながらジャングルビーとスパイクジェリーというトゲを射出してくる危険な魔物が生息している階層。
把握で周囲を常時確認しながら危険な罠、主に毒矢や落石の罠を警戒しなければならない。




