80 さよならした元仲間達の怨念
一方その頃。
「ムキイイィィィィーーーー! アイツ等絶対にぶっ殺してやるわ! 私が死ぬなんて不公平よ!」
そう叫ぶマシュアのヒステリーにうんざりしてくる。
さすがは悪霊……ヒステリーだけではなく、あんなクソザコクズ勇者に尻を振っていただけはあるな。
だが、その意見には同意だった。
「はぁ……叫んだ所で事態は変わらんだろう。もっと頭を使ったらどうだ?」
マシュアの様なヒステリーでビッチな輩には難しいかもしれんがな。
俺程の超が付く程の一流賢者は死んだ程度で狼狽えたりしないのだ。
「なんですって!? こんな結果を招いた癖にまだ賢者面するっていうの? 愚者さん。死んだ直後のあの騒ぎ様を忘れたとは言わせないわよ!」
「なんだと? いや……フッ……お前はわかっていないだけだ」
俺ほどの賢者の推理が間違っているとは考え難い。
だが、ルナスは実際に戦闘に入った直後から完全な状態だった。
そこから推測される結論……それは既にルナスが底力覚醒状態にあったという事だ。
連中は常に迷宮内で戦っていた。
リエルなどという無能など居ても居なくても変わらない。
奴など評価を付ける段階に無い。
賢者である俺とプリーストのマシュアが居ない状況だからこそ、身体が温まっていたという事だ。
ドラークが何やら言っていたが、あの無能がルナスの強さの秘密などありえない。
仮にそうだとしたら、賢者である俺が見抜けないはずがない!
つまり奴は本当に無能なのだ。
「それに怒りで感情を埋めるより、良い話があるぞ?」
「なによ?」
「連中は今頃、我々の代わりが務まる者を集める為に必死になっているはずだ。しかし、我々ほどの実力者はそう居ない。それはこの結果を見れば明らかだろう?」
「フフフ……そうね」
そう――我々はまだ現世に留まっているのだ!
あのクソザコクズ勇者ドラークは何やらブツブツ呟いていたが、すぐに消えて逝った。
それに比べて我々の凄さはなんだ?
つまり、そういう事だ。
我々程の超が付く程の一流は肉体が死した程度で現世を離れる事など無いのだ!
今尚迷宮内で存在を維持し続けている。
これもそれも奴等を惨たらしく殺し、更なる英知、強さを得る為だ。
醜態を晒し続けるマシュアにはわからんだろうが、連中など通過点にしか過ぎないという事だな。
「わかったか? 連中が仲間探しに躍起になっている間に我々は迷宮で着々と力を蓄え続けているのだからな。奴等と次に遭遇した時を楽しみにしておけば良い」
「それに既に助っ人の確保も出来ているしね」
確かに我々は肉体が無くなり、霊体となった。
だが、我々は迷宮内に漂う悪霊共を吸収し、更なる強さを得ている。
今までと同じと思わないでもらおうか。
リエル!
次に会った時がお前の最後だ!
「フヒヒヒヒ――ぐわぁあああ! 呪いの罠が! 蝕まれる! ぐわぁああああ!」
突如発生した呪詛の罠によって、霊体が蝕まれる!?
な、なんて苦しさだ!
「なにやってんのよ! あんた! バカじゃないの!?」
「うるさい! さっさと治せ!」
文句ばかりのクズ女だ。
しかし、こんなヒステリーでもプリーストとしての能力は期待出来る。
とりあえずは呪詛の効果を解除出来た。
「クソ! リエルめ! こんな事になったのはすべてアイツの所為だ!」
「ええ! 絶対に殺してやるわ! 私達の様な優秀過ぎるパーティーに運良く所属出来ただけのアイツに必ず報いを受けさせてやるのよ!」
その為にも迷宮内で力を蓄えてくれるわ。
フヒヒヒヒヒ!




