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76 足早に去る


「うむ……仕事で来たのだ。礼を言われる程ではない。私よりも、私に助力をしてくれた仲間やみんなに感謝してほしい」


 と、ルナスがそれとなく俺や他の冒険者達へと村人の意識を向けさせようとするけれど、助けられた村人はみんなルナスへ各々感謝を述べていた。

 逆に俺に対しては誰? って感じの顔付きだ。

 まあ別に慣れているし、今回やった事と言えば死んだフリと援護射撃ぐらいだしな。

 姿を見ていない相手に感謝するのは難しいだろう。


「遠くで見てたぜ。人質を助けるために狙撃したのはお前だろ? 中々の腕じゃねえか」


「あ、まあ……」


 と、冒険者で砦からこっちを確認していた人が俺の背中を叩いて褒めてくれたくらいか。

 逆を言えばレンジャーに属している人達には認識されているという事だ。

 反応からして死んだフリをして、棺桶になっている事はバレていない。

 おそらくは死んだフリを使った際に気配が消える……潜伏か何かのスキルを使ったと思われたのだろう。


 勇者のルナスと付き添いのレンジャーである俺とでは周囲の認識に大きく差があるのは至極当然のことだ。

 その事に関して俺は特に何か不満がある訳じゃない。


 元々ルナスに色々と面倒な役割をしてもらっているからさ。

 依頼に関しても相談には乗ったりするけど、最終的に決めるのはリーダーであるルナスの役目だ。

 影のリーダーとか言って依頼を俺が決めるのも違うって事は俺も分かる。


 あれだろ。

 影のリーダーって要するに『くくく、お前達が崇める勇者は俺の思い通りに動く駒なんだぜ』とか、そういう路線の悪役の事だろう。

 残念ながらそういう欲求はあまりないなぁ。


「ヌマー」


 俺もがんばった! って感じでクマールが俺にじゃれてくる。

 はいはいありがとうな。

 その気遣いだけで嬉しいさ。


「戦勝会をしたい気持ちは分かるが、まずは村の被害確認や修復作業が優先だぞ!」


 ルナスが砦のみんなに釘を刺してから、俺達は次の作業に移って行った。

 具体的には村で転がるオーガ達の死体の処理、建物の被害状況の確認、オーガの残党がいないかの調査とか色々とな。


 安全が確認され、みんなが思い思いに戦いが終わった事を実感し、戦勝会が始まった。

 和やかなムードの中で戦勝会を始める挨拶を村と砦の代表、そしてルナスが行い、音頭が行われた。

 華やかな音楽の演奏が行われている所でルナスが俺とクマールの所にやってくる。


「では、そろそろ行こうか」


「ん? もう行くのか?」


「君が祝いを楽しみたいというなら残るがここでの依頼は達した。代表達にも達成の許可は先に頂いている」


 もう出発か、随分と早い事で……。


「早く私は迷宮に行きたいのだ」


 やっぱりそうか。

 それが本音で色々と忙しい宮仕え勇者って立場を利用して達成報告の許可をもらったんだな。


 まあ……このまま戦勝会に参加していたら冒険者達は元より、治療中の派遣された勇者パーティーの連中とも話をしなくちゃいけなくなる。

 酒も付き合いで飲む事になるし、不用意にポロッと秘密をしゃべったりしかねない。

 何より普段のルナスは口数がそこまで多くない。

 適切な話をする印象だった訳で……本音で話せない所は苦手な所があるようだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] レンジャーとしても腕も上がってきてるよね。 自信持って良いんじゃないかな。
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