74 追撃魔法
「ウガ――」
「ガァアアアウアアアア――アア!?」
それだけで周囲が白く目が眩むほどの強大な雷が飛んで行き、逃げゆくオーガ達の半数が黒焦げになって事切れた。
本当……勇者の怒りによる覚醒ってとんでもない理不尽な強さだ。
本来、ブレイブオーガを相手に戦う場合、こんなあっさりと終わることはまず無い。
しっかりと連携を取ったパーティーで盾役の前衛、勇者や戦士がしっかりとブレイブオーガの攻撃を受け流しながら集中砲火の魔法や射撃をして、勇者がここぞって所で強力な攻撃を放ちながら戦って……数時間を掛けて倒さないといけないほどの化け物だ。
ただのオーガなんて目じゃない化け物なんだ。
それを4発で仕留めるとか……いや、4発も耐える今回のブレイブオーガもブレイブオーガの中でも規格外に強い個体だったんだろう。
ここまで強いはずのブレイブオーガ本人はルナスの強さに文句一つ言わずに笑った……まさに武人だった。
それに比べたら取り巻きのオーガ達は平凡だったのだろう。
こうして残った村には静寂が訪れ、オーガ達の無数の死体が転がる結果となった。
戦闘終了か……俺は死んだフリを解除して物陰からクマールを連れて出る。
「どうだ、リエル! 私の活躍は!」
「相変わらず凄いよ。ほぼ一方的な蹂躙だったな」
「ははは! それだけ実力に差が開いていたという事だ! しかし迷宮の外でここまで力を奮える相手が居たとは思わぬ収穫であった。楽しめたぞ!」
「あのブレイブオーガ……ドラゴンとか倒せそうな位強かったんじゃないか?」
「間違い無いな。奴が腰に巻いているのはドラゴンの革だぞ」
うわ……やっぱり化け物ってのは間違い無いじゃないか。
その化け物をあっさりと倒したルナスが規格外なんだろうけど。
「では砦に戻るとするか。敗走したオーガ達も二度とここに攻め込もうなどとは思わんだろう」
「そりゃあ……本物の勇者ってのはあんな化け物なんだとか思い込むだろうからな」
相手に化け物がいると思ったら侵略なんてしようとは思わないだろう。
人間の中にはルナスみたいな奴がそれこそ無数にいるとか広まってみろ。
それがルナスだけだったとしてもさ。
本当、理不尽とはこの事だ。
まあ少なくともしばらくは攻め込もうなんて思わないはずだ。
「あっぱれなオーガの勇者だった。勝った私は覚えておかねばならん。少なくとも三撃目でやられる勇者よりは強いと思うぞ」
またもルナスが倒した相手を馬鹿にしている。
俺を眼中に無いと馬鹿にしていた挙げ句、マシュア達と結託していた勇者一行だけどさ……ルナスと比べたら可哀想だって思う。




