72 影に隠れる者の末路
「ウガアアアア!」
逃がすな! とばかりにオーガセージが声を上げると女性の進路を塞ぐようにオーガが現われた。
「させると思うか? 僅かな動きで人質の命の危険があったから動かなかったに過ぎない事を知るが良い!」
が……ルナスがオーガアーチャーの矢を投げつけてオーガ達は絶命し、女性が砦の方へと完全に逃げ切る事が出来た。
「ウッガアア!」
仕留められた事に腹を立てるオーガセージは邪悪な笑みを浮かべてブレイブオーガの元へと駆け寄り、背後に立って声を上げる。
今度はブレイブオーガと力を合わせてお前を倒すと言うかのようだ。
その卑劣な手口は不愉快そのものだぞ。
「人質に逃げられたら強者の影に隠れるか……」
ルナスも不快だとばかりに先ほどよりも殺気をさらに強めて剣を構える。
「ウッガッガ! ウヒヒヒ」
不愉快な笑いをしながらオーガセージが魔法の詠唱に入った直後、ブレイブオーガが……オーガセージの背中に手を添え……るのではなく頭を掴んだ。
「ウガアアア!? ウガ!? ウガアア!」
何だ? 何をする! とオーガセージがブレイブオーガに抗議の声を上げるがブレイブオーガはゴミを見るかのように目を細めた。
そしてメキメキっとオーガセージの頭を握る腕の筋肉が盛り上がっていく。
「ウガアア!? ウガ! ウガアアアウゲェエエ――」
やがてグシャ! っと音を立ててオーガセージの頭は握り潰されて死体が転がった。
卑劣な部下を処分した……とも取れるが、邪魔だから消えろと攻撃したようにも感じ取れる。
それくらいブレイブオーガはルナスに向けた強い眼光を宿している。
人間でもオーガでも賢者は勇者に倒されるのか。
「ウガァアアアアアアアアア!」
ここに来て好敵手を見つけたとばかりにブレイブオーガが雄叫びを上げてルナスに笑みを向けた。
そして配下のオーガ達に下がれとばかりに手を上げる。
オーガ達はブレイブオーガの命令に従って下がって行く……。
「ほう……ここまでの強さを見せて笑うとは……その意気やよし! さすがはオーガの勇者と呼ばれるだけはあるぞ」
「ウガァ……」
ルナスも相手の意思に合わせて剣を構えた。
「ウガ……」
圧倒的強者と戦いたかったとばかりに笑みを浮かべたブレイブオーガはルナスに向けて巨大な剣を構え、全身の筋肉を膨らませて跳躍しルナスに叩きつける。
「その恐れを知らぬ態度、どこまで持つか見極めさせてもらおうか……レイブレード!」
ボン! っとばかりに巨大な光の柱とおぼしき剣をルナスが掲げて叩きつけてきたブレイブオーガの剣とつばぜり合いを起こし……ブレイブオーガを剣で弾き飛ばした。




