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07 最強の条件

「ああ、このスキルは普段は何の効果も発動しない。ある特定の条件下のみ効果を発動させる、特殊なスキルなんだ。これが私が他の勇者よりも強いと言われる秘密だ」


 特殊な条件か。

 スキルには色んなモノがあり、そういった条件限定のスキルというのは意外と多い。

 なのでそれ程不思議には思わなかった。

 この場合、重要なのはその条件だ。


「その条件って?」


「ああ……私のこのスキルはな」


 ルナスがその条件を告げる瞬間、思った。

 この嫌な予感、当たる奴だ。


「――仲間が死んでいる時に効果を発動する」


 仲間が死んでいる時に発動?

 いや、まあ、確かに勇者の『怒り』って付いている位だし、怒っている時に発動するんだろうなとは思っていた。


 同時に納得してしまう。

 確かにそんな特殊過ぎる条件では滅多に発動出来ない。

 狙って発動させようものなら、そいつは人間じゃないだろう。

 命を命と思っていない外道のする事だ。


「こんなスキルに勇者の名が付いているなんて酷いと思わないかい? 勇者ならば最後まで仲間を守ってみせろと、仲間を失ってから得る勝利に何の価値があるんだ……そう思うだろう?」


 ルナスがこの話を俺達に怖くて話せなかった事にも納得がいく。

 伝承に登場する英雄とか勇者って仲間の死に怒り、新たな力に目覚め、乗り越えた、みたいな展開は結構多い。

 物語や伝承では仲間の死というのは盛り上がり所ではある。

 だが、実際にされる側……仲間の視点になると、どうだろうか?


 実際にはやらないとしても、だ。

 仲間達は、自分達を見殺しにするかもしれない勇者、という不安が常に付きまとう事になる。


 ルナスの立場からすれば、こんな不安になる様な話を誰かに言える訳がない。

 彼女はそんなリスクを背負った上で俺に話してくれている。


 そこまで来て、俺は嫌な予感の正体に気付いた。


「わかってくれた様だね。君の死んだフリが発動している時、私は最強の勇者になれるのさ」


 ……。


 …………。


 ………………は?


「どうやら君の死んだフリは世界すら騙す程の効果がある様だ。だから実際には死んでいないにも(かかわ)らず、私の勇者の怒りが発動するんだ」


 なるほど。

 そういう条件があるなら、確かに俺の死んだフリとは相性が良い。

 本来、仲間の誰かが死ななければいけない様なスキルを自由に使えるんだからな。

 そして、この手の条件が厳しいスキルは大抵、効果が大きいという法則がある。


「勇者の怒りが発動している時の私は最強だ。絶対に誰にも負けないという自負がある」


「は、はぁ……凄い自信だな」


「その上で最近思っていたんだ。勇者の怒りの発動を前提にした場合、マシュアとルセン、居なくても良くないか? とな」


「ええ!?」


 おいおい、これは一体どういう事だ。

 勇者様がマシュアやルセンと似た様な事を言い出したぞ。


「今現在、勇者の怒りが発動している時、私は一般的な勇者の四倍の力を得る事が出来る。彼等が一度動く時間で四回動く事が出来るし、単体指定魔法に範囲効果が付与され、回復魔法は味方全体に、攻撃魔法は敵全体となる」


 それは凄い。

 何より心当たりがあった。

 俺達の実力では絶対に勝てない、と思ったのに死んだフリから復帰した時には戦闘が終わっていたんだ。

 その時はマシュアとルセンがルナスを褒め称えていたが、そういう裏があったのか。

 ドラゴンとの戦いで言われていた話も確か四倍……腑に落ちる点はある。


「この状態になった時、私の魔法はプリーストのマシュアと賢者のルセンを軽く上回る。むしろ彼等を巻き込んでしまう可能性があるから好きに戦えない、という状況まであった」


 確かに勇者は武器と魔法を同時に使いこなせる存在だ。

 しかし、どうしても専門家には一歩譲る部分はある。

 そんな専門家である二人を上回るとか。

 更に言えば、マシュアとルセンだってその道では……実力者なんだ。

 自分を神に選ばれた存在と言っちゃう位には、な。

 それだけで勇者の怒りというスキルの効果がどれ程凄いのかがわかる。


「正直に言ってしまえば、彼等は足手まといだ」


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[一言] 勇者「なあリエル、最近怒りがぬるいんだ・・」 主人公リエル「ん?」 勇「あのさ、ポックリ逝くと感っ、ゴホンい怒りがな」 主「・・・」 勇「一回拷問のような、手足切り飛ばされて悲鳴をあげるとか…
[気になる点] リエルと会う学校時代に勇者認定受けてるのはどうやってだ?
[良い点] なんたる秀逸なスキル設定!
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