69 オーガ
「ヒィイイ!」
「逃げるんだー! 早くこっちに来い!」
村人達の避難誘導をルナスや他の腕に覚えのある冒険者、戦士が前に出て行う。
そこに近づくオーガ達は後方で援護をする俺や魔法使い達が魔法や矢で射貫いて仕留める。
「ウグアァアアアアア!」
「うわぁああ!?」
ルナスが盾を前にしてオーガの攻撃から村人を庇う。
「ウガ――!?」
「早く逃げるんだー! ほら! 早くいけ!」
「は、はい!」
一目散に村人達は砦に向かって走って行く。
「いつまでその卑劣な拳を私に向けている! はああ!」
スパン! っとルナスは剣でオーガの胸を突いて仕留める。
「ヒュー……新しく来た勇者様は中々の方みたいで頼りになるぜ」
なんて他の冒険者がルナスの評価を下している。
そりゃあ……一部の上位冒険者じゃないと潜れない程の階層まで潜れるルナスだからな。
前回の迷宮で上がったLvもかなり影響しているだろう。
「……そういうお前、無駄口を叩いている暇はあるのか? さっさと行け」
「あいよ」
そうしている内に避難誘導が終わり、村人達はみんな砦に向かって走って行った。
怪我人はいるけど、被害は可能な限り押さえ込めただろうか。
ドシン! ドシン! と地響きの音が響く。
物々しい出で立ちの無数の傷跡を持った大きなオーガが巨大な剣を手に……悠然とした歩調でこちらに向かって歩いてきた。
アレがブレイブオーガだ。
眼光は鋭く、元々巨体なオーガよりも更に巨体で、全身が筋肉としか言い様がない程……戦士だったら大いに憧れるだろう体躯をしている。
「ウガァアアアアアアアアアアア!」
ビリビリっと大きく空気が振動する大声をブレイブオーガは発している。
普通の人間ならコレを聞いただけで怯んでしまうだろうな。
「大将が出てきたようだな」
牽制とばかりに援護射撃の矢や魔法が飛んで行くがキンキンと音を立ててブレイブオーガの皮膚を貫く事無く弾かれて地に落ちる。
うはっ……とんでもない強度をしてるなぁ。
俺もクロスボウで矢を放つと辛うじて少し刺さるだけで致命傷は無理だな。
ブレイブオーガの強靱な再生力の前に刺さったその場で勝手に抜けてしまう。
「ここは私達が引きつける。打ち合わせ通りに後退して作戦に備えろ!」
「チッ! 無茶するんじゃねえぞ」
「私を誰と心得る。真打ちの勇者など不要である事を証明してやろう」
挑戦的な冒険者を相手にルナスは勝ち気に答え、ブレイブオーガを相手に剣を向けて構える。
命令に従い、冒険者達は砦の方へと急いでオーガ達へと牽制しながら撤退していった。




