66 勇者の趣味
で、ルナスはどうやらもっと腹を割って話をしたいんだろう。
「ルナスの趣味って何なんだ?」
「よくぞ聞いてくれた! 私の趣味は演劇鑑賞だ」
演劇鑑賞……ああ、劇場とかで見られる芝居とかだな。
場所によっては盛況だと聞く。
もちろん英雄譚なんかも演目にあったりするので……うん、勇者の娯楽としては無難な趣味なのかもしれない。
ルナスもなんだかんだで勇者らしい華のある趣味があるじゃないか。
「本だけでは想像が難しいモノも演劇では明確にしていたりして非常に楽しめる。王宮での舞踏会などでも劇団が呼ばれて見れる事があるそうだぞ」
「へー……」
俺はどっちかというと本で済ませてしまう方なのであまり演劇は見てないな。
なるほど、ルナスは休日とかだと演劇を見に行っていたりしていたのか。
なんだかんだ冒険者ってのは毎日働いているイメージがあるけど、依頼を達成した翌日とかは休日にする事も多い。
休日はギャンブル三昧、酒飲みまくりなんて冒険者もいるんだけどさ。
「今度リエルも一緒に行こうでは無いか」
「良いけど、クマールがいるからな……」
ああいう会場で使役魔を連れての鑑賞って出来るのか?
「大人しくしてもらえば良いのだ」
「ヌマ」
「死んだフリをさせて首に巻けば豪華な襟になるだろう」
いや、それはさすがにどうなんだ?
クマールは襟巻きか?
確かに金持ちとかそんなの巻いてたりするけどさ。
問題はクマールは襟巻きにしても不格好なんで向いてない。
「ヌマー」
「……普通に首輪でもつけて大人しく膝に抱えるなりするのが無難か」
「ふむ、絶対に後で行くんだからな。演劇の素晴らしさを君に教えてくれる! デートだ!」
堂々とデートと言っちゃったよ。
勇者ルナスは勘違いの余地を与えないらしい。
「デートとかはともかく、楽しみにしておくよ」
「うむ! その日の食事はどうしたものかな。私の知る城下町の名店に行くか。それとも君に作ってもらうか」
「その時に決めれば良いよ。まあ気が向いたら作るさ」
「約束だぞ」
そんな雑談をしてから俺達は就寝した。
数日ぶりのベッドでの就寝に俺達はぐっすりと休む事が出来たのだった。
それからなんだかんだと国の辺境までの道は進んでいき……目的地の辺境の村に隣接する砦に俺達は到着した。
砦では緊迫感が漂っていて、腕に覚えのある冒険者達がいつでも戦える様に武器の手入れをしていたり、食事を取っている。
「では話を通してくる」
ルナスは代表として砦の関係者へと宮仕え勇者の証を持って挨拶に行ってしまった。




