65 趣味
「私なりのアピールだと思ってくれ」
そうだったのか。
とはいえ、残念ながらそういう気分にはならない。
う~ん、少しは言葉を選ぶか。
「不器用すぎて全く興味沸かないから」
「くっ……なんとつれない反応ではないか! 私はそんなに君の好みから外れているのか?」
「外れるとかそういうのとは違うから」
好き嫌いだけで言えば、ルナスの外見は……まあ、かなり好みだ。
ここ最近の言動が残念なだけで外見はクール美人だしな。
ルナスって本当不器用というか何というか少しくらいは気持ちは分かっているし、悪い気はしないけどそこまで露骨なのがね。
「ふむ……まあ良い。これは勇者の怒りによる強靱な力でもすぐには解決出来ない、難攻不落の強敵という事だな。攻略しがいがあるというものだ」
なんかルナスがほざいてる。
もうちょっとルナスは距離感を掴む方法を学んでくれ。
なんて言うか……ルナスとは性別を感じないというか、ルナス本人は自分を女性と思っているんだろうけど、女の子らしくない受け答えやしゃべりって言うのかな?
少しは化粧してるけど格好が女の子らしくないんだ。
これは勇者としての教育の所為かな?
雄々しくあるし魅力にも繋がっているんだけど、どうにも他の部分が不器用って言うか……。
なんとなく頼りになる男友達と接しているような気分になってしまう。
あれだ……俺も色々と整理が付いていないってのがあるんだと思う。
こんな状態でズルズルと、男女の関係になるのはよろしくない。
色々と後悔するような生き方はしたくないし、なんだかんだルナスは宮仕えの勇者になったばかりの大事な時期なんだ。
下手な事をして一生を台無しにさせるわけにはいかない。
勇者の仲間ってのは従者みたいなモノで、主人を時にはたしなめるのも役目なのだ。
「はいはい」
「ヌマァ」
クマールを撫でると気持ち良さそうに満面の笑みを向けてくる。
格安だったけど悪い買い物をしたとは絶対に言わないし、後悔はしてないぞ。
一緒に頑張って行こうなー。
「ふむ……リエル、私達はもっとお互いを知るべきだと思わないか?」
「なんだかんだパーティー結成から一緒に行動してるから色々と知っていると思うけど?」
「そうだが、それだけでは分からない事もあるだろう。例えばリエル、君の趣味は料理なのはなんとなく分かるぞ」
「まあ……自炊は趣味と言えば趣味だけど」
「他に読書もだろう? 私も昔は読書していたんでね。英雄譚は元より恋愛小説なども嗜んでいた」
読書は……幼い頃から勉強の為に本を読む習慣があって、ずっと続いている感じだな。
親の影響っていうのかな?
読んだ本を丸暗記させられた事もあったっけ。
その影響で読書の習慣があった感じだ。
ちなみにその親だが……俺のファーストスキルが死んだフリだった事を思えば、ありがちな展開だった。
今更思い出すまでも無い。




