63 アジト特定
「さてと」
討伐の証として、まあ敢えて描写を避ける代物を死体の硬直が解けてから取って置く。
この辺りは冒険者になった時は気にしたものだが……慣れるもんだよな。
「ヌマ?」
クマールが小首を傾げている。
あのな、さすがにこの程度の相手に死んだフリ戦法をむやみやたらする必要は無いんだよ。
定期的に勇者の怒りを使っていた影響か、ルナスも使ってくれコールが無かったしな。
「もう少し腕に覚えのある奴だったら良かったのだが……面白みの無い戦いだった」
「なんだかんだ俺達って宮仕えになるくらいには実力があるわけだしな」
10人もの山賊達を蹂躙する位には強さに差がある。
この力の差は……数年前の俺ではまるで想像出来なかった。
「ヌマー」
二人ともすげぇやって目をキラキラさせるクマール。
ああそうだぞ。
死んだフリだけが俺じゃないから、そこだけは理解してくれ。
「ここは街道だ。山賊共の死体の処理をしないと血肉の匂いに誘われて妙な魔物が来かねない」
っと、山積みになった山賊達の死体を処理しておく。
「こんな所に山賊共が出た訳だが……奴らのアジトもついでに探しておくべきだろうか?」
山賊ってのは大体、襲撃地点から大した距離が無い所にアジトとか拠点を用意していたりする。
帰って来ない仲間を探してくる可能性もあるし、捕まっている人もいたりする。
ちなみに山賊のアジトから得られた物資の一部は報酬として貰う事も出来るので討伐後はしっかりと報告するのが無難だ。
もちろん大概の組織なら評価点になる。
どこの国や村も連中には困らせられているからな。
「先を急いでいるというのに面倒なモノだな」
「そう言うなって。山賊退治とか評価に関わるから悪い話じゃないだろ」
「そうだな……とはいえ、面倒くさい作業だ。リエル、アジトの特定を頼めるか?」
「この辺りは俺の仕事だしな」
いくら考古学者を名乗っているとはいえ基本的にはレンジャーな訳で、偵察は俺の役割だ。
ここでやらなきゃ誰がやるってな。
「ヌマー」
荷物をある程度、山賊共の死体の処理をしているルナスに預けて周囲の偵察へと行こうするとクマールが俺の後を付いてくる。
「ふふ、君と一緒に行きたいようだな。クマール、リエルを任せたぞ」
「ヌマー」
なんとも健気な反応だ。
まあ、山賊の強さやこの辺りの魔物の強さ、俺の把握感知範囲を考えたら危険は無いか。
「よし、ちゃんと付いてくるんだぞ」
「ヌマー!」
という訳でクマールを連れて俺は山賊達のアジトの特定をすることにした。
とは言っても奴らが潜伏していた場所からそれらしい足跡が無いかの確認をして、足跡を逆に辿って行くだけなんだけどな。
把握で……ちょっと草地とかが多くて見失いそうになるな。
「ヌマ……」
クンクンとクマールが地面の匂いを嗅いでいる。
スキル関係無しのタヌクマとしての追跡能力か?
クマールのファーストスキルは把握だから、俺よりも把握する力は高い。
だが、ここは熟練と経験、Lvが上の俺も負けていられない。
意識を凝らして山賊共の足跡を追跡して……。
「あったな」
「ヌマ!」
襲撃ポイントから少々離れた所に奴らが拠点としていたらしき隠された山小屋みたいな建物を見つける事が出来た。




