61 山賊
「ヌマヌマ」
「では注意しながら行くとしよう」
「ああ」
というわけで俺達は気づきつつ進んで行くと……突如矢が飛んできた。
ついでに氷の矢の魔法もだ。
先制攻撃のつもりか?
「はぁ! いきなりなんだ? 出てこい!」
矢と魔法の両方をルナスが魔法で消し飛ばして声を掛ける。
するとぞろぞろと、12人ほどの荒々しい連中がニヤついた笑みを浮かべながら林から出てきた。
「フフフフ……奇襲には気づかれちまったようだが構わねえな。随分と少ねえ人数で旅をしているみたいじゃねえか。ちょっと俺達に付き合ってくれねえか?」
「手荒い歓迎をする奴らに付き合う義理は無い」
賊……この場合は山賊って扱いが良いか。
山賊らしき連中の言葉にルナスがきっぱりと答える。
「おうおう、つれねえな。見たところ随分と顔が良いようじゃねえか。後ろの冴えねえ奴はともかく色々と楽しませてくれた挙げ句、高く売れそうだ」
完全黒確定だな。
ちなみに宮仕え勇者は賊の討伐も仕事に含まれる。
飛んで火に入る夏の虫って感じでもあるが、相手の数が多いか?
ただ……悪いけど山賊達の強さはそこまで無さそうだ。
「舐められたものだな。私の名をルナス=メロリアと知っての言葉か!」
「知らねえなー」
「宮仕え勇者だ! 命が惜しければ無駄な抵抗はしないのが身のためだぞ?」
ルナスは宮仕えになった際に授かった身分証明の証を取り出して見せつける。
国が正式に公認した上位勇者の証だ。これを知らない者は居ないって位の証ではあるのだけど……。
ルナスの台詞と証の提示にリーダーらしい山賊の背後に居た4名ほどが二の足を踏んで仲間達に顔を向ける。
「狼狽えんな! はったりに決まってんだろ! 偽物だろ!」
「でもよ。あの女の剣とかすげぇ業物じゃねえか? 嘘じゃねえかも知れねえぞ」
「何言ってんだ。あの後ろにいる冴えねえ奴と訳の分からねえペットを見れば分かるだろ! どこぞの調子に乗ったお嬢様に決まってんだろ」
うえ……判断基準が俺とクマールってのはどうなんだ?
「ヌマ? ヌマ?」
処す? って感じでクマールが俺を見ている気がするけど……いや、違うな。
死んだフリ? やる? って顔だ。
「幾ら武器が高くても中身が伴ってねえと意味なんかねえんだ! お嬢様のお遊戯に付き合う義理はねえよ! お前ら……後ろの奴は殺せ、この女は生け捕りだ。やるぞ!」
「「「おう!」」」
と、山賊共は武器を持ってこっちに襲いかかってきた。
その動きは……うん。
俺でも分かるほど未熟としか言い様がない。
まあ本当に強いなら山賊になんてなるはずもない。




