60 潜伏者
「タイミング次第じゃルナスの助けにもなるかも知れないからさ」
「ふむ……楽しみにするとしよう」
「ヌマ!」
ムフーと役立った事を誇らしげにしているクマールを撫でて褒めてあげる。
頭や胸を撫でるのも良いけど、お腹を撫でるのが一番喜んでくれるようだ。
「さて、森を抜けた後は……街道を進んで行き、途中で町を経由して目的地に進む形だな」
「ああ」
ちなみに街道辺りは馬車とかを使って移動もしているわけで……森はさすがに便が無いから使わずに近道をしたに過ぎない。
森さえ抜ければこの先は目的地まで迷う事無く進めるだろう。
「しかし思うのだが……君と一緒に森を抜けると食料や物資が減らずに増えるな」
道中で見つけた高額で売れる薬草や香草、キノコや鉱石を少々採っていっただけなんだが……確かに荷物が増えてしまっている。
魔物も素材の一部を持ってきてるしなぁ……。
「途中で寄る町で買い取ってもらったり交換に使えば良いさ」
「そうか、既に私達は宮仕えなので金銭はそこまで困っていないが……承知した。君が採取した品々の換金をして私達に渡して居たな……改めて思うが君がいるからこそ、こう言った金銭を稼げるのだ。礼を言わねばな」
冒険者の金銭を得る手段は何も依頼を達成するだけでは無い。
移動の最中に見つけた品々をしかるべき場所に持って行く事でも発生する。
把握というスキルと使える品々の理解で物資となり得る。
「いつもの事だから気にしなくて良いよ」
「ヌマー」
これが戦闘じゃあんまり役立てない俺の仕事なんだしな。
という訳で俺達は街道である森を抜けた道を進んでいく……整備された山道なんだけど人通りはちょっと少ない。
「ん……?」
「ヌマ?」
「どうした?」
そんな街道をしばらく進んだ所で……なんか10人くらい街道の左右にある林に潜んでいるのが把握で確認出来た。
たぶん、潜伏スキルとか所持している奴も混じっているんだろう。
スキルの技能の差があったら気付けなかった所だ。
一応Lvと熟練故に、性能が低い把握でも察知出来た。
「この先に10人くらい潜んでる」
「ほう……一体どんな目的で潜んでいるのか。安易に賊か、もしくは自警団の類いか」
賊ってのは文字通り盗賊とか山賊という犯罪者で追い剥ぎとかする連中だ。
自警団はそう言った賊が来そうな所に潜伏して見張っていたりする。
なので潜伏=悪として先制攻撃は得策じゃない。
ただ……いきなり奇襲してきたりもあるので警戒するに越したことは無いけど。
前者の場合、10人となるとそこそこ多いからな……どうしたものか。
先制攻撃で矢とか魔法が来る可能性もあるから注意しないと。




