56 照明
「ヌマ……」
ああ、クマールも起きてしまったか。
「気配からして5体、中型の……木の上を移動して近づいてきてるか。猿型の魔物で……この森に生息するランページコングの群れだと思う」
「なんとも無粋な連中だな。方角も分かっているのだろう?」
「当然……さっさと寝直したいし、ルナス……任せるよ。方角はあっち、ご丁寧にこっちに突撃しようと距離を測ってる。ああ、回り込んでいる奴もいる」
「おお。任せてくれるのか、話が早くて助かる」
「クマール、お前はゆっくり休んで良いからなー。目はしっかりと閉じているんだぞ」
目を覚ましてしまったクマールを撫でながら、俺は死んだフリを作動させて棺桶に収まる。
「ヌマ」
クマールも合わせて俺の棺桶の隣で死んだフリをしている。
「ではこの暗闇を利用して奇襲をしようとしている君たちへ先制攻撃をしようじゃないか、目潰しの……『ライト!』」
っとルナスは周囲を明るく照らす魔法を放つのだが、勇者の怒りの効果で周囲を真っ白にする位の閃光が放たれてしまった。
「グホオオオ!?」
「ウッグホオオ!?」
ルナスが放ったライトの光は夜の森を日中よりも強く照らし木の上で距離を測ろうとしていたランページコング達の目を盛大に眩ませる。
というか明るすぎて幽体離脱状態じゃないと目が眩んでいたのは間違い無いだろう。
把握で大雑把に周囲の状況は判断出来ているだろうけど。
「グボオオオオ!?」
目が! 目が! とばかりにランページコング達は顔を押さえて転がっていた。
そして、あまりにも光が強すぎて……失明してしまっているのか光の中で何も見えないとばかりに周囲をキョロキョロと見ようとしていた。
うわ……目潰しが強すぎて、完全に目を潰しちゃったか……。
「さて、無粋な奴らよ。今夜の私たちはゆっくりと休みたいのだ。遊びは無しで仕留めさせて貰うぞ」
ルナスが地面を踏みしめて残像を纏って飛びかかる。
「ウッグホオオオオ!」
奇襲に来たランページコング達は音だけでルナスへと強靱な腕を振りかぶって殴りかかるが、ルナスには届かない。
「はあああ!」
スパスパァ! っとルナスはランページコング達を切り伏せて息の根を止めた。
なんとも……相手の実力を測るだけの能力があれば良いのだけど……あ、ランページコング達よりも遙か後方にフォレストウルフの群れを把握……したけどすぐにその場から立ち去って行った。
ルナスが放ったライトの魔法でどれだけ強さに差が離れているのか把握したようだ。




