54 野営
「ふむ……」
なんて話をしている間に肉に火が通って居るのを把握したので切り分けてルナスとクマールに差し出す。
「良い火の通り具合だ。君が焼いた肉は絶品だな。道中で採取していた薬草も使っているのか?」
「ヌ、ヌマ~~~~!」
すげえ美味いよ! アンタ何でも出来るんだな! って感じでクマールが肉を食べながら目をキラキラさせて見てくる。
そこまで喜んでくれるとうれしいもんだ。
「ああ、人があまり入らない森だからか、香草がいっぱいあって良かった。味が良いから人気が高くて値段も高い香草があったよ」
だから今日は結構奮発した晩餐だ。
下手な店より美味しく出来たと思うぞ。
これでも料理は趣味の一つなんだ。
「人の居ない森と言うのは食材の宝庫であるな」
「迷宮もそうだけどさ。とは言っても何でも食べられるわけじゃないし」
迷宮内で遭遇する魔物を全部食料にとか出来たら楽なんだけど食用に向かない魔物なんかは多い。
毒素を含んでいたり色々とな。
同様に、野山で採れる食材も案外限られていたりする。
「こういう所はレンジャーの君に頼りっぱなしだな。幾ら勇者の怒りがあっても不可能な事だ」
そりゃあ強力な力が使えて機敏に動けるようになると言っても、料理や採取は別だ。
ここまでルナスが出来てしまったら本当に俺は死んだフリ要員でしかない。
「礼を言うよ」
「どういたしまして、さ……冷めないうちに食べよう」
「ああ」
「ヌマ!」
さて、適度に群生していた野いちごでジャムでも後で作って置くか。
腐りやすいからある程度早めに処理しないと行けないけどさ。
なんて思いつつチーズを掛けた肉を頬張る。
中々悪く無い出来だ。香草も良い感じに効いてて食が進んだ。
そうして全員が満足出来るだけの食事をすると夜が更けていく……。
野営はもう馴れている。
迷宮でも当たり前のようにやっているし。
「ふわぁああ……」
「ヌマァアアア……」
ルナスとクマールがあくびをする。そろそろ仮眠を取る頃合いか。
「それじゃ寝るか」
「そうだな」
テントは既に張ってあって、各々眠る。
夜襲の警戒とか思うかも知れないが、俺は把握持ちで就寝時、周囲に妙な気配があると起きるように訓練している。
ルナスもその辺りは長年の訓練で即座に動くくらいの気配は察知可能だ。
なので……不必要に警戒はしない。
「リエル、もう寝ているか?」
「何?」
「ヌマァ……」
クマールが俺にすり寄る形で丸まって寝息を立て始めているので優しく撫でながら眠ろうかとしている所でルナスが声を掛けてきた。
「ふと気になったのだがリエルがここで死んだフリを使い、私が倍速状態でそのまま寝たらどうなるのだろうな? 睡眠時間を短縮出来るのだろうか?」




