49 迫真の死んだフリ
言おうとしている事はわからないでもないけど。
「なんか感動的な話にまとめようとしてるけどさ、まとまってないからな」
こう……やっててむなしくなるような事は言わないでもらいたい。
クマールは自身の死んだフリに何か思う所があるのか、先ほどから何度も寝転がっては死んだフリの練習をしている。
改めて考えると……惨めな気持ちになってきた。
やっぱり死んだフリって誇れるもんじゃないよな。
「しかしリエル、これは悪い話でもないぞ?」
「その心は?」
「私達と行動を共にすれば、いずれは迷宮でLvが上がり、相応の強さを得ていく。クマールは死んだフリの習性があり、誇りに思っている。君がクマールに舐められる様な事もないだろう」
なるほど。
確かに下手に戦闘系の使役魔だと、そういう危険性もあるのか。
その点で言えばクマールが成長して強くなっても俺を下に見る事は無い、と。
「クマール」
「ヌマ!」
何? って鳴いてきた。
「これが俺達の……切り札だから、驚かないようにな?」
「ヌマ!」
わかったって感じで頷いてくれた。
それから遭遇する森の危険な魔物相手での死んだフリ戦法で進んで行った。
しばらくするとクマールは俺が何故死んだフリをする事を完全に理解したのか、戦闘が始まると俺の横で死んだフリをして真似るようになった。
……まあ、下手に動き回られるよりは良いんだけどさ。
ルナスも戦いやすいみたいだし。
「さて……リエル、クマールだけ死んだフリをするようにしてみてくれ」
「え? わかった。クマール、死んだフリ」
「ヌマ! ヌ、ヌマァアア!? ヌマ――」
死んだフリの命令を理解したのか俺の言葉にクマールは頷き……なぜか演技が掛かった死んだフリを始めた。
喉に手を当ててから口をだらんと開き、助けを求めるように数歩歩いてからガクッと苦悶の表情で倒れる。
毒を盛られて死んだみたいな……一体誰にそんな事を教わったんだ?
なぜそんな演技をした。
ピク……ピク……っとクマールは死んだフリをして動かなくなった。
なんだその動きは。
いや、死んだフリか。
ああ、まあ、中々凄い死んだフリなんじゃないか? 多分な。
「では見ててくれ。ハァ!」
ルナスが俺の前で走って見せたり剣を振って見せたり、魔法……通常状態のメガブレイズ、炎の竜巻を発生させる魔法を放つ。
火炎瓶を放ったみたいな炎が進んで行く。
迷宮でマシュア達を絶命させたような炎の奔流では無い。
一応、通常のメガブレイズも強力な魔法ではあるんだけどさ。
結構燃え上がるし、ただ……あの時みたメガブレイズには及ばない。
「どうだ? これが君以外の死んだフリであり、私の強さなのだ」




