45 名付け
「これから俺達がお前の主人だぞ。よろしくな」
「ヌマ」
「うん。聞き分けも良いようだ」
「よろしく頼む」
「ヌ、ヌマー……」
サッとタヌクマはルナスから隠れるように俺の後ろに回り込む。
なんて言うかルナス、怯えられてるのな。
引きつった笑みを浮かべているルナスだったがタヌクマを見つめてから俺に顔を向ける。
「さて、ではこの子の名前でもつけてやるとしようか」
「そうだな。とりあえず名前は大事だよな。ずっとタヌクマって種族名で呼ぶのはどうかと思うし」
どんな名前が良いもんかね。
「リエル――」
「2号とかつけたら怒るからな」
最近のルナスの調子からそう言った俺を若干ネタにしたふざけた事をしそうな気がしたので念を押してみる。
幾らスキル構成がほとんど俺と同じだからって2号なんて名前をつけられたらたまったもんじゃない。
「……オホン、ただ君の名前を呼んでから提案しようとしただけじゃないか」
非常に疑惑が付きまとうが聞き流して置こう。
「じゃあどんな名前が良いんだ?」
「ではそうだな。マシュアやルセン……雄だからルセンでいいか。その名を付けるのはどうだ?」
自分で葬った元仲間の名前を名付けに入れるルナスの神経はどうなっているのだろうか。
いや、確かにそう言ったドラマチックな感じで死んだ友の名を付け~~みたいな美談とかありそうだけどさ。
一応アイツ、賢者だしな。
ルセンの様に賢くなる様に……アイツは賢くないだろ。
魔法脳筋って感じか?
ともかく、あの二人の死に関しては、どう考えてもそういう感情は湧かないだろう。
むしろその名前だとアイツ等みたいに育ちそうでなんか嫌だ。
「却下。不謹慎だろ」
「うむ……不謹慎ではあるが覚えやすいかと思ったのだがしょうがない」
あの世にいるマシュアとルセン、良かったな。
さすがにタヌクマの名前に使われるのは不憫だろう。
というかルナスって人名覚えるの苦手だったりするんだろうか。
ちょっと怪しいんだよな。
こう……残念具合からしてさ。
「ふむ……」
「ヌマー」
「タヌクマ……クマールとかどうだ?」
微妙に安直な感じだけどこれって名前も無いし、それで良いか。
「じゃあお前はクマールだ」
「ヌマ!」
意味が分かったのかタヌクマ改めクマールは元気に応える。
「よし、使役魔も購入した……荷物持ちがコイツには出来るのか?」
「積載軽減を持っているみたいだし、俺が使っていた大きめのポーチを背中に掛けて置こう」
俺の持って居た大きめのポーチをクマールの背中につける。
「ヌマー」
ポーチをつけられたクマールは特に嫌がるそぶりは見せない。
所持スキル的にも意味は分かっているのだろう。




