44 使役魔購入
「良いのか? すごく安いから問題ないけど……いくらスキルがあるって言ってもあまり荷物持てないと思うけど」
「君が見捨てられないという顔をしてるだろう。このスキル構成に思う所もあるようだし……ふふふ、私は君に恩を売っておきたい」
前半は良いんだけどさ……後半が残念だ。
言わなきゃかっこいいのにな。
後、何故笑った。
けれど、そう言ってくれるのはありがたい。
「まあ、ありがとう。ルナスなりの後押しって事にするよ」
「じゃあ買うのかヨー? 雑食で人が食べれるものは何でも食べれるヨー、もちろんしっかり教育してあるヨー。魔物使いのお墨付きネ。それともう大人だから大きくならない安心ヨー」
人に馴れるように教え込んでいるから大丈夫って事なんだろう。
まあ、俺はレンジャーで見習い時代に使役魔の世話の仕方を教わってるからある程度どうにかなる。
……このタヌクマの場合は戦闘用って感じじゃなくて愛玩用で良いと思う。
大きくならないみたいだしな
愛玩用の使役魔ってよくわからない種類だと予想以上に大きくなって捨てられて野生化ってパターンもある。
本来生息していない地域で変わった魔物に遭遇した場合、まず捨てられた魔物だと疑った方が良い。
「ああ、この金額で良いんだな?」
「毎度ありヨー。お前運良かったなー。食べれなくて残念ヨー」
コラ! この店主、なんて事を言いやがる。
お前には心が無いのか!
肉の卸売りってそんなもんだけどさ。
もうちょっと客に気を使ってくれよ!
「これが登録タグヨー」
店主に金銭を渡すと使役魔を管理する用のタグを受け取る。
それから店主は死んだフリを継続しているタヌクマの首に巻いてある紐を取って……手足を縛って吊るして渡してくる。
おい、それって倒した獲物を運ぶ時の縛り方だぞ。
「おい……」
「おっと失礼しちゃったヨー。持ち帰りの肉じゃなかったヨ」
とりあえず縛ってあるのを解いて、首につけた紐をそのままルナスに持たせて渡した。
「お客さん、ありがとうヨー」
「これでこのタヌクマは私達の物だ。後から返せと言われても今更遅いぞ?」
またそれか。
そのセリフ、やっぱり気に入ったんだな。
「いらないから返すと言われても今更遅いヨー」
お前もか。
ソレ、流行っているのか?
二人して良い顔するな。
こうして俺達はタヌクマを使役魔として購入した。
「……」
「コイツはいつまで死んだフリをしているんだろうな? 私達に買われて命を繋いだというのに」
「ルナスに怯えていたみたいだからな」
「失礼な……」
ルナスからタヌクマを受け取って様子を確認っと。
「……ヌマ?」
あ、起きた。
死んだフリを解除したのか動き出したぞ。
「ヌマー」
前足を上げて挨拶とばかりに俺に鳴いてる。
人に馴れてるというのは間違いなさそうだ。
とりあえず下ろしてっと……うん。逃げる様子も無い。
登録タグに掛けられた魔法の影響なんだけどさ。
それでも逃げる奴はいる。




