42 絶賛セール中
「私か? 単純に好みと言うなら鳥型や猫型だが、こうして見ると犬系も悪く無いな」
と使役魔の子供を座り込んで撫でるルナスは勇者とは思えない優しい顔をしている。
マシュア達が居た頃はクールって感じで使役魔なんて興味が無いって印象だったけど、こうして話をすると普通に女の子って感じなんだなぁ。
別の側面って事だろう。
「やはり高額なのは見た目の良い者か戦闘面の性能が高いスキルを持っている者みたいだな」
「まあそこはしょうがないよな」
「どちらにしても私の活躍を見ているだけとなる。強さなど二の次だ。余裕があるのは素晴らしいな」
「ク、クーン……」
なんかルナスの邪な空気に使役魔の子供がおびえている。
勇者なら懐いてきそうなものだが、そうでもないらしい。
ルナスにそう言った事を期待した俺が間違っていたのだろうか?
可愛がろうって意識はあるのはわかるんだけど、勇者の怒りによる高揚に夢中であるのは変わらないか。
使役魔の子供を撫でるのをやめたルナスが俺の方に顔を向ける。
「迷宮にも同行させるという意味で無難なのは馬系の使役魔か?」
「その辺りが無難と言えば無難な選定だけど、鳥馬に該当する種も悪く無い」
「ふむ……君が気に入る使役魔はこの店向けではなさそうだ。では次の店へと行くか」
って感じで使役魔を扱っている店を巡って行く。
そうして巡って行き……店主が包丁を研いでいる出店に立ち寄る。
なんか飯の準備中って雰囲気だ。
「ほう……」
その店で首に紐をつけて繋がれている一匹の魔物……小型の犬系……じゃないな。
なんかそれに近い使役魔にルナスは近づいて詳細に目を通している。
「リエル、リエル、見てくれ」
「どうした?」
手招きするルナスに近づくと、詳細の部分を指さした。
値段が随分と安い……というか購入者がいなくて値下げに値下げをしましたって感じで値札が何枚も貼られている。
で、この使役魔は種族名がタヌクマって名前らしい。
性別は雄だ。
「ヌマー」
……へんな鳴き声だ。
冒険者としてそれなりに広い範囲で活動しているつもりだけど、こんな魔物見た事ないな。
「フフ……」
「ヌ、ヌマ!?」
ルナスが屈んで顔を近づけた直後、タヌクマって使役魔はルナスの顔を見てビクッと怯えるような表情をした後、コテンと転がって動かなくなった。
どういう事だ?
「そ、それはどういう意味だ。おい、起きろ!」
絶句してうろたえているルナス。
もしかしてルナスの並々ならぬ気配を察知したのだろうか?
「フッ……まあ良い。よくわかってるじゃないか」
さっきも使役魔の子供を怯えさせていたけど、何がわかったんだ?
「きっとコイツは私の強さを瞬時に見抜いたのだろう。中々見所のある魔物じゃないか」
いや、絶対違うだろう。
どう考えても何かやばそうだから失神したぞ。
っと思いながら改めて所持スキルを確認。
ファーストスキル、把握。
セカンドスキル、死んだフリ。
サードスキル、積載軽減。
なん、だとっ……?




