34 充実した環境作り
「ふむ……中々悪くない収入だな」
ルナスも笑いが止まらないと言った様子で硬貨をいじっている。
「リエル、どうした?」
「いや……すごい報酬だなぁと思ってな」
「この程度、これからの私達が得る金銭に比べたら端金だぞ? 今からそんな調子でどうする」
「そりゃあそうなんだろうけどさ」
改めて色々と今度の金銭の運用方法を計算する。
まずは装備のメンテナンスだろ?
新しい装備の代金、食料……あ、今後の事も考えると荷物袋も一新した方が良いか。
荷物袋の軽量化や容量増加の改造をしてもらうと途方も無い金が掛かるし、俺の役割を考えると良いかもしれない。
後は鍵開け道具のオーダーメイド品とか、魔法付与、高級聖水に魔法結晶……考えるとドンドン減っていく。
けれど、使えるお金の量が多いって素晴らしいな。
より充実した環境を作る事が出来れば、それだけ次の冒険で有利な状況に出来る。
いくらルナスの勇者の怒りが尋常ではない強さとはいえ、強い分持って行く道具も増えるし、潜る階層も深くなり、持って帰る物も増える
その上でどれだけルナスをサポート出来るか、が今後の冒険において重要になるはずだ。
ルナスの助言通り、俺は迷宮学の考古学者を名乗る事にした訳だしな。
各種鑑定は出来るだけしたいし、呪いの解呪も出来る範囲を増やしておいた方が良い。
それ以外にも様々な備品を準備出来るのは……仕事とはいえ、楽しくもある。
「リエル? 君は何か難しい顔をしているが一体どうしたんだ?」
「あ、いや……この金銭で今後の冒険を楽にするためにどうしたら良いかと考えていたんだ。お金があるって素晴らしいな」
「ふふ……金を前にして冒険への投資を考えるとは、その日の贅沢や快楽に使わないのは実に君らしいな。とても頼りになるぞ」
確かにそう言った贅沢を日々の楽しみにしている冒険者は多い。
収入は多いけど出費も多い。
命を賭けて戦っているんだからちょっと位良いよね? と言った誘惑が起こりやすいというのもある。
高いお酒や料理を食べるだとか、頻繁に娼館に通っているとか、よく聞く話だ。
それが冒険者の懐事情って奴だな。
けれど俺はそんな事よりももっと前に、能力が無い故の工夫をして来た。
「良いじゃないか。これが俺の金の使い道なんだから」
あぶく銭で贅沢をするより、より良い装備で更なる金銭を生むように環境を整えて行くのが好ましい。
もちろん、俺自身も興味ある事への投資は十分にしている。
迷宮などにある文字とか、なんて書いてあるのかとか……使えないけど魔法文字とか。
無いからこそ求めているって言うのが正しいのかもしれない。




