31 さよならして気付いた事
お前が言うな! っと激しくツッコミたい。
最初から作戦を無駄にする気マンマンじゃないか。
「無駄になる作戦を考える方の身にもなってくれ。もちろんルナスの力に頼り切りな作戦だから、本当は良くないんだけど」
「わかってくれているなら良い。それと私は自分が活躍出来る事を誇りに思っているからな。ドンドン頼り切りになってくれ」
それもどうなんだ?
いや、実際今後も頼り切りになるだろうが、気持ち的には何もかも勇者の怒り戦法にするのも不安が残る。
常にもしもの事は考えておきたい。
「もちろんマシュア達が騒がなかった場合に考えていた作戦はある。その為に事前に準備していた物とかもあったんだ。高かったけど防寒の熱カーテンを作り出す魔法結晶とか作ったし、落とし穴を設置したり消えない焚き火も設置する予定だった」
「うむ、それでこそリエルだ」
ただ、そんな作戦に頼らずともごり押しが出来てしまうんだから余計な事はする必要は無い。
少なくともこの階層の敵ならば作戦を立てない方が上手く行くはずだ。
「防寒の熱カーテンの魔法結晶か……」
「マシュアが防壁魔法を使ってくれれば不要なんだけどな。あいつ攻撃と回復しかしないし、得意じゃないって言うんだからしょうがなかったんだよ」
ルセンも賢者だから使えるはずなんだけど、アイツも基本的に火の攻撃魔法しか使わないんだ。
多分だけど、他の魔法も使えはするが火の魔法以外は詠唱速度が遅いとか、何か理由があったんだと思う。
今となっては本人がこの世に居ないのでわからない事だけどさ。
ちなみにこの魔法結晶……俺のポケットマネーで用意した奴なんだ。
「後で報酬から君への経費で支払うはずだった代物だな……もしかすると彼女はこの経費に腹を立てていたのか?」
その可能性はありそうだな。
マシュアの戦術的思考は攻撃と回復しか無かった。
だから補助魔法や妨害魔法とか、罠の設置とか、地形利用とか、あまり理解していなかった節がある。
魔物は剣と魔法で倒すのよ、みたいな感じだった。
何よりマシュアは結構金にがめついんだ。
まあ金への執着はマシュアだけではなく、教会も何かとお布施を望む傾向があるけどさ。
ちなみにルセンも賢者である事を理由に金への妄執が凄かったっけ……あの二人、結構もらっていたはずなんだけど、何に金を使っていたんだろうか。
「やはり思うのだが、マシュアは人に言うほど一流だったか?」
……まあ、違うだろうな。
少なくともルナスの魔法が来ると思った時点で防御魔法の準備くらいはしておけと思いはする。
現にドラーク一行は使っていた。
そもそもマシュアに補助魔法って概念は無い。
そんな物を使うくらいなら攻撃した方が最終的に効率が良いって言っていた位だ。
「仮に我々が敗北し、あの先輩勇者一行が勝ったとして、マシュア達は上手く派閥に居られたと思うか?」
無理じゃないか?
補助魔法は使わない。
呪いも解除出来ないプリーストに古文書とか文献が読めない賢者が一流パーティーで出来る事なんて戦いだけだ。
その戦いだって先輩が居た訳だし……ドラークの性格を考えれば、どこかで適当に処分されて終わっただろう。
どちらにしてもマシュア達の未来は無かったのか。
勇者間の政治闘争だった訳だけど、そう考えるとちょっと哀れだな。




