28 考古学者
「だろうな」
蹂躙と呼ぶほどの圧勝をルナスは一人でやり遂げてしまった訳だから間違い無く迷宮の40階は楽に行けるだろう。
そういう意味では良い指標になったのか?
「どうかね? 潜っていくかい?」
簡単に行けるんだから良いよね? 良いよね? とでも言いたげな様子のルナス。
切り替え早いなぁ……まあいいけど、今回の状況的に40階まで行くのはどうだろう。
依頼の期日とかもあるし、所持量にも限界はある。
「いや……食料とか物資を考えるともう少し準備をしてからが良いんじゃないか? もちろんある程度は潜っても大丈夫なんだろうけど」
「君がそう言うのならしょうがない。では今回の目的を達成するために次の階へ行き、エンシェントフリージングクイーンレオを倒すとしよう」
「倒すのは良いけど永久凍結花を燃やしたりしないでくれよ」
「当然だ。いくら私と言えど、それくらいの判断は出来るぞ」
「それは悪かった。魔法の加減が出来ずに焼き尽くしたとかやりそうと思ってさ」
俺の指摘にルナスは腕を組んで納得したとばかりに頷く。
気付いてなかったのかよ。
本気で注意して良かった。
「なるほど、その可能性は大きいな。この連携をする前は微塵も考えなかった」
そりゃあ攻撃力過剰の連続攻撃なんだから、周囲の影響も考えなきゃいけない。
ボスは仕留めたけど採取物も吹っ飛ばしちゃいましたじゃ話にならないわけだ。
「後、リエル。私は今回の事で気づいた事がある」
「なんだ?」
「君は自身をレンジャーとしての役目に負い目があるだろう? 連中も何かと三流三流とうるさかった。だが、私からすれば死んだフリが無くても君は頼りになる人物なんだ。そこで王宮で聞いたぴったりの職業を思い出した。これからはそう名乗るというのはどうだ?」
レンジャーとして戦闘に適したスキルを所持しなかった俺にルナスが知ったぴったりの職業名ねー……。
何だろう?
死んだフリ要員とか、私の覚醒スイッチとかだったらさすがに怒るぞ。
「古代文字が読め、身軽で迷宮に挑む者……『考古学者』という職業がぴったりだと私は思う」
おお? 想像とは違ってしっかりした職業だ。
考古学者……って確か過去の文明なんかの探求をする研究者だよな。
「残念ながら俺は学者や研究者じゃないけどな。ただ……確かにレンジャーと呼ぶよりぴったりかも知れないのは事実か」
誠に恥ずかしながらって感じでしかない。
職業の性質上、学者の人達はレンジャー系のスキルを所持している事が多いのは確かだ。
しかし、アーチャーや狩人、罠師などに比べると攻撃的な能力に劣る。
代わりに迷宮内で鑑定をしてくれたり、迷宮内に点在する特殊な装置を動かしてくれたりする、らしい。
なので攻撃能力が少ないという意味で、俺は彼等に近いのかもしれない。
本当……セカンドスキルやサードスキルに武器系のマスタリーの一つでもあれば違ったんだろうけど……。
「迷宮学の学者を名乗れば良いのだ。多少誤解があったとしても、宮仕えになったのだからそれくらい自信を持って言わないといかんぞ」




