26 光の剣
こんなあっさり……わかってはいたけど、もはや蹂躙だ。
加減ってものを知らないのか?
まあコイツ等、さっきから腹の立つ様な、ゲスい事ばっかり言っていたからわからないでもないけどさ。
同情出来る相手でもないしな。
「おお、この攻撃に耐え切れたか。さすがは先輩勇者であるな」
「そ、そんな……俺達は、迷宮40階層を踏破した実力があるんだぞ!」
まだ戦えるとばかりに焦げ気味のドラークが怒りの形相で怒鳴る。
「ルセン……底力覚醒とスロースタートだったか? そう推理してしまっても不思議ではないが、この結果を鑑みれば賢くはないな。いや、私達と敵対してしまった時点で君は愚者の方だったのだ」
ルナス、同情している風だけどさ……ボロクソ言ったな。
まあ見当違いだったのは事実だけどさ。
多分、今まで俺が危機的状況になるまで死んだフリを使わなかった事で、戦闘が長引いてからルナスが強くなった……と推理したんだろうけど。
「バカな……なんでこんな!?」
確かにこの強さは最強と言うより理不尽だよな。
自分達が動く前に尋常ではない魔力を帯びた火炎が同時に四つも飛んでくるんだぞ。
そりゃあ先輩勇者ドラークだって狼狽えるだろう。
「ま、まさか! そこの棺桶の男がいる意味は!?」
あ、気付いた。
さすがに勇者関連のスキルには心当たりがあるらしい。
それと棺桶の男ってなんだよ。
ドラークからすれば俺なんて名前すら覚える価値が無かったんだろうけど。
マシュアもルセンもそうだけど、どいつもこいつも俺への評価が低過ぎて眼中にすらなかったって感じだ。
「あ、ありえない! そんな事が出来る奴がいるなんて!?」
まあ、わかる。
当事者の俺もそう思うよ。
「ご名答……では先輩には敬意を表して勇者としての基礎スキルで、かつ全力で相手をしよう。それでは受けてくれ『『『レイブレード』』』」
残像を纏いながら高速でドラークの懐に接近したルナスが剣に手をかざして光を纏って剣を両手持ちにして魔法剣を発動させた。
勇者なら使える基本剣技の一つであるレイブレードという攻撃なのだが……剣の刀身以上に光が伸び、光の奔流となってドラーク達を切り裂く。
「うぐっ――! !!―――」
少しずつ俺の認識が追いつくのだが、一撃目はドラークは持っていた剣で受け止めた。
凄い! あれを耐えたぞ!
さすがは先輩勇者。
あ、でも剣が折れた。
二撃目でとどめとなり絶命、三撃目で吹き飛んで壁に激突、動かなくなった。
もちろん攻撃の余波でドラークの仲間達も同様の末路を辿っていた。
「切りすぎてしまったか。経歴から四発目まで耐えてくれるかと思ったのだが……」
想像以下だとルナスは呟いた。
いや、直前にメガ・ブレイズの四連射を受けてコレだぞ?
実際はかなり凄いんじゃないのか?
相当耐えた方だと俺は分析しているが……。
「リエルを馬鹿にした者達への粛正とはいえ、元仲間に手を掛けるというのは虚しいものだな……」
と、割と迷いが無いように見えるルナスが遠い目をしていたけどさ……なんだろう。
反吐が出るような事ばかり言っていた連中だったから同情しようにも出来ないのは確かだ。
ただ、少しばかりマシュア達の事を思い出すと胸が苦しいような気がした。
ルナスの言っていた様に、みんなで冒険をした日々は確かに輝かしいものだったんだろうな。




