23 権力闘争
「良いか? お前のような戦闘で時間を掛けるような勇者の中でも才能が低い奴には限界が来る。ここで俺達にやられる位なら素直に投降して身の程というモノをしっかりと理解して、素直になるのが一番だぞ?」
「いや、いくら何でも暴論にも程があるだろ」
「リエル! アンタに発言権なんて無いわよ!」
しゃべるなってか?
まあそれだけ下に見られているんだろうけど。
「勝手に決めるな! 俺だって言い返すに決まってんだろ!」
「あーあー聞こえないわ! アンタなんて最初からお呼びじゃないの! わからないの? どうやってルナスを懐柔したのか知らないけど、そんな事をされると私の人生設計が上手くいかなくなっちゃうの! だからさっさとここで死になさいよ!」
俺が死ぬ事がお前の人生設計に組み込まれているとか、どんな理屈だよ。
訳が分からない。
そんな理不尽を受け入れられる訳ないだろう。
しかし、ルナスを懐柔?
懐柔されたのはむしろ俺の方では?
実際、まんまと死んだフリスイッチになっている訳だし。
ん? ルナスがしたり顔で何か言おうとしている。
嫌な予感しかしない!
「マシュア、勘違いしてもらっては困るな。懐柔ではない。身体の相性だ」
「はぁ!?」
なんで態々誤解を生む様な言い方をした。
スキル相性が良かっただけだろ。
絶対狙って言っただろう。
既成事実を作ろうとするな!
「クソ! このビッチが!」
いや、なんでルセンがそんなに切れてるんだよ。
「そうかつまり男か……目の前で奪ってやるのも悪くない」
などと舌舐めずりをするドラーク。
あの男は本当に勇者なんだろうか。
ルナスも混乱して野盗の親玉みたいな事を言っていたけど、勇者が悪に堕ちる先はあんな感じなのか?
はぁ……どいつもこいつも……もうマシュアの言う通り黙ってようかな?
その方が上手く行く様な気がしてきた。
「……なるほど、ここで死にたくなければお前の慰み者になれというわけか」
「よくわかっているじゃねえか」
「やっとわかった? こっちだって色々とお膳立てしたのよ? 本当だったらこんな手荒な事をしなくても良いようにしてたってのに」
マシュアがなんか言ってるけどさ……なんて言うかプリーストってなんだっけ? って思うような行動にしか見えないぞ。
新米の弱小宮仕えパーティーの俺達が古くから王宮にいる先輩勇者パーティーに目をつけられて潰される……つまりこの一連の流れは勇者間の権力闘争って奴だった訳だ。
そういう政治闘争ってさ、力が関わらない所でやることじゃないのか?
「そういう訳だ。ルナス、先程も言った通り、今なら隣にいる無能を処理するだけで済む。帰ってくるなら今の内だぞ? じゃないとお前もここで死ぬ事になり、迷宮から帰ってこなかった事になるんだぞ? フヒヒヒ」
ルセンの勝利を確信した下品な笑み……ルナスの眉がドンドン不快そうに跳ねていく。
この状況とは全く関係無いけど、前々から思っていた事がある。
ルセンのこの笑い方は絶対直した方が良いよな。




