22 先輩勇者
勇者ドラーク、俺達より先に国に認められた熟練冒険者。
年齢は……確か34歳だったかな?
筋肉質の体付きをしており、業物の大剣を所持している……ルナスからして正当な勇者と認識する人物だ。
ただ、なんか目付きというか、下品な笑みを浮かべてヘラヘラしながら俺達を見ている。
「お前が宮仕え新米勇者のルナスだったな」
「……そうだが? 大いなる先輩勇者殿、故あってダンジョン内でマシュア達と袂を分かつ事にはなってしまったが……二人を送り届けようとしてくれたのか?」
「王宮でもそうだったが、まだ青さが抜けない勇者なのは変わらないか」
「青さ……?」
ルナスが首を傾げているとドラークは手招きして言い放つ。
「お前は宮仕えの勇者となった意味がまるでわかっていない」
「……?」
途端に黙り込んで首を傾げるルナス。
なんて言うか、俺と二人でいる時よりも口数が減っている。
ルナス、もしかしなくても対人能力はあまり高くないのかもしれない。
あるいは1対1の時にだけ能弁になるタイプか。
「どうせお前の事だから国からの命令であるパーティー単位での迷宮の深度更新と物資調達をしていれば良いと思っているんだろう?」
違うのか?って顔でルナスはドラークやマシュア、俺を交互に見つめる。
いや、何か答えてやろうよ。
「だからお前はわかっていないというんだ」
「はぁ……」
俺とルナスはマシュアに視線を向ける。
すると嬉々とした様子でマシュアは話し始めた。
「やっとわかった? 私達がより躍進するためにはね、より権力を持つ勇者パーティーと合流して、しっかりと連携を組んで行けば良いの! 争うよりも効率的でしょ?」
マシュアがドラークに身を寄せて恋人を紹介するように言い切る。
「だが、お前達のパーティーには一流ではない人材が紛れ込んでいる。だからそいつを処分しないといけない。三流のレンジャーなどいるだけで欠点になってしまうのがわからないのか?」
「これでわかったか? 確かに宮仕えの勇者というのは力が求められる。困難な任務を達成するためのな! だが、あまり出しゃばると俺達のような先輩宮仕え勇者達に目を付けられると言うことだ。そして、賢く立ち回るなら……俺達の配下に加わるのが一番正しいという事だ」
ドラークはそう言った後、俺をゴミを見るような……マシュア達と同じ目付きで見てくる。
「にも関わらずゴミに肩入れして余計な手間を増やしたっていうじゃないか。こりゃあ仕置きしてやらきゃいかんなぁ……」
ペロォっとドラークは舌舐めずりをしてルナスに言った。
なんて下品な……冒険者には血の気が多い連中が多いのは分かっているけど勇者になってもこんな奴がいるんだな。




