21 取り付く島もない
32階のマッピングが終わればタイミングとしては進むか戻るかの判断をするのにちょうど良いだろう。
もちろん遭遇するグレーターデーモンや他の魔物達はルナスがバッタバッタと倒している。
ここで帰り道方面に立ち寄った際、俺は気配に気付いた。
「人が来る」
「ほう……この階層まで来るとは中々の逸材のようだな。もしくはマシュア達か?」
後者だったら迂回しようとなるんだけど、気配は8人。
マシュア達ではないだろう。
「足音や気配から8人パーティーだ」
「なら彼女達ではないか。遭遇して厄介事に巻き込まれたら面倒だ。避けるとしよう」
「そうだな」
と、俺達は意図的に迂回する事にしたのだが、気配の主はドンドン俺達の方へと近づいてくる。
おいおい。
あっちにもレンジャーが混じっているならこっちに気づいていて、意図的に遭遇を避けている事くらいわかってるだろうに近づいてくるとはどういう了見だ?
それとも……。
「追いかけてきてる」
「ふむ……こちらは気を利かせているのに近づいてくるなら何か目的があるのだろう。待つとするか」
このまま逃げるのも面倒だし魔物と遭遇した挙句、連中が敵対的な相手だったら厄介極まりない。
魔物の気配が無い状態で相手をするのが無難だ。
「わかった。じゃあここで待とう」
と、近づいてくる気配を待っていると……
「いたいた! やっと見つけたわよ!」
「フヒヒ……やはりいたか」
別れたはずのマシュア達と再度、出会うことになってしまった。
どうやら8人の内、2人にマシュアとルセンが混じっていた様だ。
「おや、君達か……こちらが気を利かせているのに追いかけてきたとは、君達が何を言おうが今更遅いぞ?」
本当、取り付く島もないな。
勇者の怒り戦法が実現した今、むしろ楽しい楽しい最強無双を邪魔するなオーラまで感じるぞ。
ルナスの返事にマシュアは勝ち誇った笑みを浮かべる。
「これが最終通告よ。素直に帰ってきて、そいつを処分しなさい」
まだ言っているのか。
それがダメだったから今更遅いとか言われているんだろう。
「残念ながら私は何と言われようと君達の思い通りにはならん。いい加減醜態を晒すのをやめた方が良いと私は思うぞ?」
「そんな事を言っていられるのも今のうちよ!」
「そうだ。こっちには強力な味方がいるのだからな! フヒヒヒ……ルナス、お前が悪いんだぞ。そんな無能の肩を持ったから本来の依頼とは別の仕事が増えたんだ」
なんだ? と思っているとマシュア達の後ろから王宮で見た覚えのある奴らが近づいてきた。
「おや……確かあなたは勇者ドラーク殿だったか」
そう、俺達宮仕えとなった勇者一行からすると先輩に当たる、宮仕えの勇者であるドラークという男性勇者とその仲間がマシュア達の後ろにいたのだ。
なるほど、こいつらがいたからマシュア達と一緒にいると判断がつかなかったのか。




