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207 魂の探究者

 やがて会議を終えたルナスがクリストと一緒に戻ってきた。


「皆の者、任務が来たぞ! しかと耳をかっぽじって聞けぇい!」


 だからなんで王宮からの指示とか報酬払いの時だけ妙な口調になるんだよ。


「実質休暇も終わりか……その間に色々とあったけど」


 異なる世界に迷い込み、中級レンジャー試験から続く事件、変な魔物使いに絡まれると列挙したら奇妙な事ばかりだった。

 魔法の修練とかも加味すると殆ど休んでいたような気がしない。


「で、次の任務は?」


「……東の地への長期遠征だ。我等のパーティーにその大任を承った。実にくそ食らえだ。休暇が明けたら迷宮に挑もうと思っていたのだがなぁ! イケメン!」


「ん? クリスト?」


 ちょっと待て、クリストをなんでルナスが呼んだ?


「そうそう、私も今回の遠征からリエル達と同行する事にしたんだ」


「非常に不服だが王宮からの指示でな。そのイケメンをパーティーに所属させろとの話なのだ。訳が分からん」


 強引に入ってきたな……その辺りの人事まで干渉出来る権限持ってるのは確実だが。


「そう邪険に扱わなくても良いじゃないか。これでも私はリエルと昔一緒に遊んだ仲なのだよ?」


「遊びに巻き込まれたってのが正しいけどな。シュタインと色々とやらかしてただろ」


「ははは、全ては幼き日の美しい思い出だろう?」


「ぐぬぬぬ……」


 なんでここでルナスが羨ましそうな声を上げているのかちょっとよくわからない。


「ふ……まあ良い。イケメンは男だからな。リエル、例えこのイケメンの家柄や権力が凄いとしても私は心移りなどしないから安心するのだぞ! 寝取られなど存在しない! 私にはリエルエンディングしか存在しないのだ」


「はぁ……」


「敢えて言うならばリエルエンディング1、2、3、4、5などのいくつかのバリエーションが予想される程度なのだ」


 いや、そんな断言してもな……何をそんなに気にしているのだろうか。

 後訳の分からない未来予想を確定の物扱いしないでくれ。


「むしろリエルがこのイケメンの餌食にならないかが不安だ」


「ルナスの考える餌食がどこまでの範囲なのかはわからないけど、既に俺とクマールはルナスとシュタインの餌食にされてるよ」


 主に死んだフリ関連でのあれやこれやで色々とな。


「少年の餌食だと!? おい、少年! どういうことだ!」


「リエルは単純に死んだフリ関連の話をしてるだけだよ、ルナスさん」


「本当か? その見た目でリエルを誘惑していないと言い切れるのか、少年!」


 ルナスって本当、言うことが残念というか……本人の目の前でなんてことを言ってくるんだよ。

 シュタインに誘惑される訳ないだろう。

 悪寒しかしない。


「わー清々しい位の疑惑だね。ここで僕はフフフ……どうだろうね。って口元に指でも当てて色っぽいポーズでもすべきなのかな?」


「ぐぬぬぬ……貴様なんぞ! クマールの玩具にされてしまえば良いのだ!」


「ヌマ!?」


 思わぬ飛び火にクマールが声を上げる。

 ルナスの中でクマールってどんなポジションなんだよ。


「冗談じゃない……勘弁してくれ」


「ははは、勇者ルナスは本当に面白い逸材の様だ。リエルも良い出会いをしている。やはり運もそれなりと言った所かな?」


 いやー……ちょっとこのやりとりで後悔してるんだけど?


「まあ、色々と今後の話をするとして、自己紹介をするにしてもここじゃあ何だし、ちょっと人の居ないゆっくり出来る所でこれからの話をしようか。私もね……シュタインと同じくちょっと話しづらいスキル持ちなのでね」


 やっぱり何か癖のあるスキル持ちだった訳か。


「ではついてきたまえ」


 そんな訳で俺達はクリストの案内されるがまま、王宮の庭園の一角、ご丁寧に施錠された温室に、だ。

 温室内には椅子とテーブルが設置されていて話が出来るようになっている。


「さて、東の地への遠征なのだけど、勇者ルナス。内容はしっかりと理解してくれているかね?」


「うむ……腕に覚えのある宮仕え冒険者の派遣先の一つ。数ある魔王が居城を構える地の近くにある同盟国への協力で向かう地であるな」


 東の地……か、そういえばサクレス達が帰ってきた訳だからその交代で俺達が派遣されたって事で良いのだろう。

 入れ替わりの派遣か……もしかしたらと思ったけど間違い無い。

 となると、もしかしたらタヌクマと遭遇する機会もあるかも知れない。

 丁度良いから現地でクマールのスキル、大妖獣ポンポコンに関する記述とか分かるかも。


「うん。特にここ1年辺り、この周辺の魔物を統率する魔王軍が活発に活動しているって話でね。多少の手傷を負わせて活動を抑える事は出来たけど手を焼いているって話なんだ」


「私達の目的は魔王軍の力を削ぐ。もしくは件の魔王や四天王を倒すのが大目的で、それが出来ない場合は期間内は派遣先の防衛だそうだ」


 魔王討伐が英雄譚における勇者の花形ではあるのだけど近年だとそこまで達成されたって話は無い。

 そういう意味だと遠征って勇者からすると夢の舞台でもあるのだけど、近年だと出世コースから離れる危険な左遷って扱いなんだ。

 ある意味、ルナスは宮仕えの権力闘争で左遷された事になるのか?

 売り言葉に買い言葉だしな。


「迷宮の41階層突破の実績があっても遠征に出されるんだな」


「うむ、実に理不尽だ」


「出る杭を打つ事に彼らは必死なんだろう。断言するよ。彼等は仮に世界が滅亡する様な事態でも、本当に世界が滅びるまで外部内部問わず争い続けるだろう」


「クリスト……」


 どうも怪しいと俺は睨んでいる。

 クリストが目を掛けているって段階で左遷なんて王宮も安易に出来ないだろう。

 それともクリストよりも上の奴にルナスは目を付けられてしまっているのか?


「私が何でも糸を引いていると思わないでくれないかな? リエル」


 見抜かれてしまっているか。


「とはいえ、逆に考えてくれたまえ。私はシュタインの話で勇者ルナス、君とリエルは此度の遠征をすぐに終わらせて成功を掴むと確信しているよ。歯ごたえのある相手と戦う良い機会だと思わないかね?」


 まあ……危険な魔物を相手に戦うって意味だと人知れず潜って行く迷宮よりも実績は積みやすいか。


「シュタインと私も同行する。これは無敵の組み合わせであるから勝利は間違いないと断言しよう」


「そこまで自信満々なのはわかったが、イケメン。貴様は我等がパーティーで何が出来ると言うのだ? その言動からして監督役という訳でもあるまい」


「ヌマ……」


 嫌な予感……俺も感じて居てクマールも何かを察知しているとなると間違い無さそうだ。

 俺の場合は念魔法のスキルから来てるような気がする。

 なんか……こう、危険察知に関して前よりも感じられる気がする。

 少なくともヴォザードよりもクリストの方が脅威度は高いと俺は過去の経験を含めて感じて居る。

 一体……クリストはどんな事が出来るのだろうか。


「では改めて紹介しようか。私のファーストスキルは、魂の探求者。セカンドスキルは錬金術だ。サードスキルは……まあ、些細なものだと思ってくれて良いよ。サードスキルだしね。リエルと同じく居るだけで効果がある類いの些細な奴さ」


 魂の探求者……? 知らないスキル名が出てきたぞ。

 かなりの希少スキルなんだろうとは思う。

 少なくともルナスやシュタインよりも希少性だけなら上なのでは無いだろうか?

 ただ……名前とカテゴリー的な推測はしやすいか?


「僧侶系か? もしくは探検家……レンジャー系か?」


 魂と付くからには聖職者などに属するスキル系統だと推測出来る。

 正直意外としか言いようが無い。

 クリストの性質からしてファーストスキルが錬金術とか、研究者肌か……指揮官とかカリスマ、将軍みたいな人の上に立つ系統のスキルを得ると思って居た。

 探求者って事は冒険者を現したりするスキルでレンジャー系にも該当する可能性はある。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] クリストのサードスキルが気になる。 あえて詳細を言ってないところが怖いな((( ;゜Д゜))) [一言] リエルをもてあそぶ存在が、また一人、、、
[一言] 肉体は死霊術で操られ、その間、魂は? 危ないなー 前のタイトルと1mmも一致点が無いから、最初さっぱりわかりませんでした。
[一言] あれ? これってよく考えたら 『肉体は屈しても、魂までは屈しない』みたいな状態が崩れそうだから、 ある意味、ルナスにとっては大事件なんじゃ?(笑)
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