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202/216

202 ハンディキャップ


「リエル、大丈夫か? 俺の使役魔を一緒に出場させても良いんだぞ? アイツ等なら喜んで参加する」


 サクレスが客席から俺に提案してくる。

 シュタインとは異なる真っ当な提案に心が洗われるような気がするなぁ。

 ルナスはコインで負けて苛立ったように殺気を放ちっぱなしだし、シュタインはニヤニヤと成り行きを見守っていて、クリストは微笑を浮かべてる。


「ヌマ! ヌマヌマ!」


 先輩たちは不要です。あんな奴は自分だけでどうとでもなります!

 と、ばかりにクマールはサクレスの提案に手を向けて拒否するように頭を横に振る。


「なんていうか……リエル、お前のタヌクマ、クマールってものすごく賢いのが分かるな」


 サクレスもクマールのボディランゲージで何を言っているのかわかったようだ。

 もしくはサクレスのスキルでクマールの伝えたい事が分かったとかだろうか。


「わかるか? 正直賢すぎて俺も時々驚かされるよ」


 ただ……大丈夫だとは思いたいけどクマール一匹でヴォザードが繰り出す使役魔に勝てるのか?


「それではこれから宮仕え公認の決闘裁判を行う! 試合方式は魔物使い式の3対3形式」


「は、そいつ一匹で俺に勝てると思ってんのか?」


 ヴォザードがクマールを指さして挑発気味に言い放つ。

 サクレスが助っ人提案したのにクマールが怒って断ってるんだからしょうがないだろ。


「僕が助っ人を出してあげても良いのにねー。ルール的には許可されるはずだし」


 いや、シュタイン。お前の場合は使役魔って扱いではあるのかもしれないが王宮のルール範囲じゃアウトじゃないのか?

 でも死霊術師って……ある意味魔物使いなのか?

 ……犬系なら扱えるとか言ってたしな。

 ただ、クマールの所持代表は俺な訳で俺がゾンビ枠で出て良いはずないだろ。


「ふむ……非常に腹立たしいが、決まってしまったものはしょうがない。これも決闘だ」


 ルナスが不満そうな顔をしたまま納得できずとも言う。


「一匹で勝てるか、か……ならば答えよう。貴様は三匹程度でクマールに勝てると思っているのかね?」


「なんだと?」


「対等に戦ってはつまらんだろう? 喜ぶがいい。これは愚かな貴様に与えるハンディキャップという奴だ」


「て、てめぇ……」


「魔物を使役する専門家である魔物使いが、魔物を使った決闘で、それもハンディキャップを受けた上で負けたとしたら、貴様はとんだ恥さらしであるなぁ?」


 ……相変わらずルナスの言葉の刃が鋭いよな。

 マシュアやルセンを相手にしている時みたいな挑発がヴォザードの精神を揺さぶっているぞ。


「ではクマール、お前がやる気を見せているから任せる。もしも負けたとしても安心しろ。お前が抜けた際に発生するリエルの心の穴は私がしっかりと埋める予定だ」


「コラ! 何言ってんだ!」


 ルナスがここぞとばかりに負けた場合の話をクマールに突きつけやがった。

 心の穴をしっかりと埋めるって、どうなんだよ。

 はっきりと言ったらダメなセリフだぞ。ルナスってやっぱり残念としか言いようがない。

 これで応援してるつもりなんだろうか?


「ヌマァ!」


 負けられません! やりとげます! っとクマールが先ほどよりも決意に満ちた威嚇の声を上げた。

 期待に応える為にも主人の使役魔として試練を乗り越えて見せます!

 クマールはヴォザードが出したホーンビートル、クリムリザード、レッドタックルボアとにらみ合いを始めた。


「わー……ルナスさん、リエルに怒られちゃってんのー」


「私はクマールのやる気を出しただけだが?」


「もうちょっと言葉選びってものがないの?」


「ふ……少年よ、私はクマールが負けるなど微塵も考えていない。仲間を信じず誰が信じるというのだ?」


 信じているからって何を言っても良いわけじゃないと思うんだけどな?

 こういう所が残念だって言うべきなんだろうか。

 ちょっと度が過ぎてるような気がしなくもないが……ルナスのこういう所を細かく指摘したらキリがないか。


「クマール、頼んだぞ……ルナスはああ言ってるけどな?」


「ヌマ!」


 俺の声にクマールは振り向いて大きくうなずいた。

 直接攻撃は禁止されているから俺が出来るのは薬を投げるとか念話で補佐する、サイフロートで浮かせるとかか。

 問題はクマールが巨体に育ってしまったので浮かせるのは厳しい所か。


「ギギギギ……」


「シュウウウウ……」


「ブルフィイイ……」


 主人の命令には従うとばかりにヴォザードの魔物たちも敵意を見せて勝負が開始されるのを待っている。


「それじゃあ……勝負、開始!」


 クリストの声と共に開始の銅鑼が鳴らされる。


「ヌマァ!」


 闘技場の中心にクマールは踏み出して腰に巻き付けていたベルトからハイロイヤルビークイーンから貰った杖を取り出して構える。

 対してヴォザードの魔物たちはクマールを取り囲むように陣形を組み攻撃の機会を伺っているようだ。


「正真正銘、本物の魔物使いとしての戦いを教えてやるぜ。レンジャーのお遊戯使役魔が勝てると思うなよ! ビーストハウル! チェインコール!」


 ヴォザードが叫ぶと魔物たちが揃って雄たけびを上げた後、闘気を宿してクマールに向かって猛突進する。

 ホーンビートルの角が振動を起こして風を纏い、レッドタックルボアが炎を纏って突撃し、クリムリザードが口から高圧縮した水の弾を放ちながら接近してくる。


「ヌマヌマヌマ!」


 クルクルクルとクマールは杖を振りかざして杖先から無数の魔力で形作られたハチを呼び出して周辺に飛ばし、同時に尻尾に隠していた葉っぱを出してリーフショットを旋回させる。

 それは魔法と杖の醸し出す竜巻、ビーリーフトルネードと言うべき攻撃だ。

 ハチと葉っぱ……そして葉っぱの中から火の玉が飛び出す複合属性の竜巻……バシンバシンと攻撃が突撃してきたヴォザードの魔物たちに命中していく。

 するとヴォザードの魔物たちは突進をトルネードに止められて……吹き飛ばされる前に大きく下がった。

 これはクマールの攻撃で大ダメージを受けるよりも早めに離脱することを優先したって事か。

 主人の性格に問題はあるけど、使役魔としての戦闘判断能力は高いとみるべきか。


「ヌマ……」


 クマールが戦闘相手に舐めるほどの把握をして相手の状態を確認する。

 俺も把握で確認すると……クマールの攻撃でヴォザードたちは多少ダメージを受けたけど戦闘は継続できそうだ。


「この攻撃を弾きやがるか。そうじゃなくちゃ面白くねえな」


 ヴォザードがロープを鞭のようにして地面を叩くと、クリムリザードが味方に向かって息を吹き付ける。

 するとヴォザードの魔物たちの傷が塞がって行く。

 ヒーリング系のブレスか?


「まだまだ続くぜ!」


「ブルフィ!」


「ギギ!」


 ホーンビートルが飛び上がり、レッドタックルボアが突撃してくる。

 さっきよりも早い!


「ヌマ、ヌマ」


 クマールの放った竜巻を物ともせずに二匹は接近し、クマールに向かって各々角を振りかぶる。


「ヌマ! ヌーマ!」


 そこでクマールは……ユラァ、っと姿が掻き消え、竜巻の流れが加速して二匹を打ち上げる。


「ブルフィ!?」


「――ギギ!」


 打ち上げられた二匹の魔物だったけど地面に打ち付けられるよりも早くホーンビートルが羽を広げ、レッドタックルボアを掴んで距離を取って着地した。

 で、クマールは竜巻の後方で姿を現す。


「ヌマ」


 避けられたか……ってクマールが言ってるけど、お前な。

 最近覚えた魔法とか色々と試しているな。

 どれが実戦で効率よく戦えるかって感じで。

 まあ、俺も把握でクマールが竜巻を放った所で後ろに下がっていたのはわかっていたんだけどさ。


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― 新着の感想 ―
[一言] クマールが実践練習してるようにしか見えない(笑)
[一言] おお―、 今の所、魔法使いとしての動きだね。
[良い点] ヌマヌマ言ってる子が、なんかイケメンぼいんですがw
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