20 鑑定
「ふはははは! こんな事も今の私ならできるぞぉおおおお!」
……もうなんて言うか俺が解除するまで待ってくれ、と言うのも馬鹿馬鹿しい動作で罠二つをルナスは無視してしまった。
とにかく、こんな仕掛けを作った奴の想定外の攻略をして、宝箱の前に来た所でルナスは俺の入った棺桶を床に置いた。
時間差で理解が追いつき……死んだフリを解除する。
「どうだい、リエル」
「色々と突っ込みたいがやめておく……」
「結果、ここまで来れたのだから良いだろう。リエル、後は任せたぞ」
「はいはい。とは言ってもここまで来たらする事なんてそんなにないよ」
念のためスイッチと宝箱に把握を行う。
ここまで来て凶悪な罠……なんて展開だって普通にあるからな。
うん。
どうやらスイッチは帰り道を省略するもので押した所、プールの上に床ができあがり、針山の部分も床が壁から出てきた。
「後は宝箱だけど……」
特に罠は無いようなので開ける。
中身は……指輪のようだ。
それと篭手だな。
「指輪と篭手だな」
「そうだな。ちょっと確認……魔力が込められていて古代文字が刻まれているけど……なんだろうか?」
少なくとも大迷宮の、32階なんて易々と来れない階層にある指輪なので値打ち物なのはわかるんだけど……単純に力や魔力増加の効果がある代物じゃない。
俺は荷物を取り出す。
自作のノートを広げ、ペラペラと心当たりがありそうな情報を検索する。
「おそらく魔法道具の類いだ。呪いの有無は……ない。わかった。上位天魔の指輪だ。中位までの悪魔が逃げるようになる奴」
「おお、中々便利な代物だな」
「問題はグレーターデーモンはカテゴリー上位だから効果は無いけどな」
「それでも持ち帰れば何かに使える時があるだろう」
「後は……篭手だけど……こっちも呪いは無い。描かれている古代文字から察するに命中補正をしてくれる効果がある奴だ」
現代の技術では再現出来ないアーティファクトに両方とも該当する。
迷宮探検の醍醐味となる品々だ。
「ではその篭手はリエル、君が装備しておくか。幾ら死んだフリだけで良いとしても装備しない理由にはならないだろう」
「……そうだな」
まあ、俺個人の戦闘貢献度って今までも変わらないからしょうがない。
今は死んだフリでどうにかしてるだけだしな。
それに装備しなかった場合、俺の荷物に入れておくだけだ。
「とりあえずこんな所かな? 次に行こう」
「そうだな。もっとどんどん進んで行きたいぞ」
「とは言っても今回の目的である33階への道を行くか戻るかだけなんだけど……」
国からの命令だとそこに生息する魔物のボスであるエンシェントフリージングクイーンレオという、氷結魔法を使う強大な氷の獅子の討伐か、その住処で見つかる永久凍結花という花の採取だ。
正直、パーティー解散するまでの俺達だったら達成出来るか怪しいラインだけど、宮仕えになったからにはやり遂げないといけないって厄介な任務でもある。
ただ、達成出来たら相応に評価も上がるし、金銭も貰える手はずだ。
マシュアやルセンは俺を追放した後、この任務の達成方法を考えていたはずだが……。
「もちろん前進だ。ついでにもう少し下の階層まで行って素材を持ち帰れば、その素材の売却金額ぶんだけ、依頼よりも稼げて装備強化も出来る」
ルナスは押せ押せだなぁ。
まあ、行けるか。
と、仕掛けの多い部屋を抜けてマッピングしながら進んでいく。




