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187 出店


「あんまりリエル自身が話したがらないけど、周囲の大人はリエルが幼い頃から注目はしてたよ」


「前にも似たような話しをしたろ?」


 全ては死んだフリを得てから変わってしまって、今では過去の事。

 過去の栄光と呼ぶほどじゃないけど、あの時の思い出を糧になんてむなしい事をしても何にもならない。


「それ以外だと大した話はないさ。ルナスと同じく平凡って思ってくれれば良いよ」


「リエルの平凡が平凡とは限らないとは思うけどねールナスさんも分かったでしょ? あんまり聞かない方が良いって事だよ」


「ふむ……ここまで話すのが嫌ならばしょうがない。諦めるとしよう。ただ、どちらにしても色々と話すぞ」


「みんなで遊べば良いでしょ。カードでしょ? ダイスでしょ? ボードゲームも良いよね」


「金銭を賭けないなら良いけどな」


 遊びは良いがギャンブルは破滅を招くぞ。

 嗜むのは良いけど飲まれたら話にならない。


「そういえば……マシュアとルセンにギャンブルで借金があったようでな。行方知れずなので私の所に借金の支払いをしてくれと催促が来ていたぞ。もちろん拒んでおいたがな」


 ……あの二人、借金持ちだったのか。

 本当、どうしようもない事ばかりしていた二人だなぁ。


「ヌマー?」


「もはやクマールも参加出来るな。カモにしてくれる。金銭は賭けないが全身の毛を全部毟るほどの敗北を味合わせてやろうではないか」


 ルナスの大人げない台詞が激しく残念だ。

 クマールはギャンブルなんてやった事無いだろうに。

 そもそもルナスってギャンブル強いんだっけ? やらないって言ってたような気がする。


「リエルとクマールって把握だから地味にギャンブルで有利なんだよね。しかもリエルは計算得意だからスキル防止のカードとか使ってても良い結果出しかねないし……ルナスさん。あんまり侮ると痛い目見るよ」


「クマールは初心者だし普通に双六とかやるのがおすすめだけどな」


 問題は大の大人が3人と使役魔一匹で双六をやる事かって話だけど、クマールに遊びを教えるってのは良いのかも知れない。

 ボール取りとか暇なときにやっていたのが懐かしいな。

 今でも訓練中の合間にやってるけどさ。

 サイフロートで縦横無尽に動かすボールをクマールに追いかけさせる遊び。


「ふふふ……早速繰り出そうではないか! ついでにみんなで城下町の市場を見て行くと楽しそうだ」


「そういえば今日はキャラバンが来てるって話を聞いたよ。試しに見に行くのも良いんじゃない?」


「キャラバンね……あの使役魔屋が居たら良いんだが……」


 クマールの件を忘れた訳じゃないぞ。

 本人から色々と聞いて育て方が分かった訳だけど、大きくならないんじゃなかったのか? とか大妖獣ポンポコンって魔物とかの話が聞きたい所だ。


「いると良いね」


「では行こうでは無いか」


「ヌマー」


 まったく……そんな訳で俺達は酒場を後にして市場へと移動をしたのだった。




 城下町の市場に移動した俺達は出店の商品などを確認しながら散策をして行く。


「なんだかんだ時々来るから出店の料理とかは代わり映えしないね」


「そうだな」


 市場では料理なんかも出されているので城下町の住んでいる人が利用している。

 俺も普段は出店で食べる事が多い。


「キャラバンはまだ到着したばかりだから店を開く準備中って感じっぽいかな?」


「ふむ……少年とクマール、リエルと私がデートをしたいから何処か行け!」


 ルナスのここぞとばかりの排除にシュタインとクマールが無視を決め込んで付いてくる。


「わークマールさーんだー!」


 市場を散策しているとクマールによく絡んで来る子供達が駆け寄ってくる。


「ヌマー」


 クマールは愛想良く駆け寄ってくる子供達に対して鳴いて答える。

 前にもあったな。こういう状況。


「ヌッマ」


 ヨイショっとクマールが子供達を抱え上げたり、子供達がクマールによじ登ったりして肩や頭に乗っかる。

 胸辺りに引っ付いている子もいるぞ。

 ノシノシと歩くクマールに子供達は楽しそうな顔をしている。


「あははは! もっと高い高いしてー!」


「おー! 市場の屋根が見えるー!」


「わー!」


 ちょっと変わった光景だけど子供達にクマールは好かれている。


「リエルさん。今日は市場で何かお買い物ー?」


「いいや、仲間のみんなと散歩」


「そっかーえっとね。あそこのお店が新メニューを出してるよ」


 などと市場を遊び場にしている子供達から店の情報を教えてもらう。

 報酬は時々クマールが差し入れで渡すハイロイヤルビーのハチミツだ。


「ヌマヌマ」


 クマールがここで子供達を喜ばせる提案をしてくる。

 うーん……まあ、少しだけだぞ。


「ヌマ」


「何々ー? なんかあるのー?」


 クマールが俺を指さして子供達に楽しい事があるよと鳴く。


「さてさて、乞うご期待」


 俺はサイフロートでクマールが指名した子を浮かび上がらせて高い高いをしてやる。


「わ、わ、わー! すごーい! 浮いてるー!」


「リエルさんが魔法をやってるんだー!」


「すげー!」


 念魔法が開花した直後に小さいクマールを持ち上げたりしていたもんな。

 覚えて居たのか。


「風魔法で少し浮かせたりする芸とかあるよね」


「ふむ、子供受けは良いな」


「魔法を使った芸とかもサーカスとかでやったりするね。みんなでサーカス小屋を見に行くのも楽しいかもね」


 演劇ともまた違う奴だ。


「キャラバンが来たって事ならやってるかもしれないな」


「サーカスか……私も見に行く事はあるのだが、訓練場でリエルの訓練風景等を見ていたら楽しめるか分からんな」


「あ、なんか気持ち分かるね。リエルが念魔法で短剣を何本も浮かせて的当てしてたりするし、クマールと芸をしてたりするもんね」


「……」


 俺とクマールがサーカスと同じ事をしていると言いたいのか?

 さすがに玉乗りとか空中ブランコとかしてないぞ。


「わーいクマールさーん」


 ここでシュタインがどさくさに紛れるようにクマールのお腹に飛びつこうとしたのだが、クマールがすかさずブロックした。


「ヌマ!」


「チッ!」


 隙あらば相手の嫌がる事をしたがるなお前……そんなにもクマールのお腹は魅力的か?


「作戦失敗だよルナスさん」


「クマールもリエルと同じく中々隙を見せんな。子供の相手をして居るなら出来るかと思ったが」


「そうだね。ここまでの道でリエルの手を何度も凝視して手を伸ばせずにいたもんね」


「しょ、少年。黙れ」


 本当、仲良くしてるなアイツら。

 なんてやりとりを少しして子供達を順番に浮かせては降ろす。


「それじゃあ、俺達は色々とみて回るからこれくらいでな」


「ヌマー」


「わかったーまたねー」


 元気よく子供達は手を振って去って行った。


「中々子供に人気があるようだな」


「時々市場に来ると、クマール目当てに集まってくるんだよ」


「ほう……」


 大人しくてサービス精神旺盛なクマールは子供達の人気者になりつつあるな。


「ヌマヌマ」


 あの子達も少し前、市場の一角で売れ残っていた自分がこんなにも成長するとは思いもしないでしょう。

 とか、クマールがなんか遠い目で俺に意思で呟く。

 まあ……売れ残りで屠殺寸前だったもんな。

 俺もスキル構成がほぼ同じで見過ごすなんて出来なかったんだし。


「子供達の事だ。クマールへの餌付けを試みたりするのではないか?」


「どっちかというとクマールの方が子供達に餌付けしてるな」


 ハイロイヤルビークイーンから貰ったハチミツ壺でよく振る舞っている。


「逆か」


「クマールさーん、僕にもハチミツちょうだーい」


 シュタインがクマールをからかおうと子供達の真似をしてハチミツを要求してる。


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[一言] 子供とはいえ軽々浮かせられるのか。 サイフロートの出力、確実に上がってるな。
[気になる点] 念魔法覚えたときってもうクマールは大きくなってませんでしたっけ?
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