17 開錠と解読
そんな力業の話をされてもな……。
「リエル、君に私のかっこいい所を見せたいんだ。任せてくれ」
「……わかったよ」
死んだフリを行う。
ちなみに魔物がいない状態だと声を掛けられたら、死んだフリのスキル発動状態が解除されるようになっている。
ただ、技能が上がったので任意で解除可能になった。
そりゃあ周囲がわかるようになったんだから当然だったのかも知れない。
自分を客観的に見る幽体離脱……弓を使うのが得意なレンジャーの持つスキル、ファルコンアイが持つ客観視のスキルみたいな状態もこれに近いモノなのかもしれない。
「では行くぞ! ふん!」
ルナスが分身して四つのボタンを一瞬で押すと扉が音を立てて開いた。
……出来ちゃったよ。
だけどこれ、かっこいいか?
いや、棺桶に向かってポーズ取った挙句良い顔しなくていいから。
俺は死んだフリを解除して起き上がる。
「出来たぞ。出来るとは思ったが、これは凄い。で、この扉の中には……宝箱だな」
「じゃあ今度こそ俺の出番だな」
「うむ。今回ばかりは私ではどうにもならん。任せたぞ、レンジャー」
戦闘はルナスに任せているけど、こういう所は俺の仕事だ。
宝箱に掛かっている罠……どうやら煮えたぎった油と火が飛び出す火だるまになる罠が仕掛けられているのがわかる。
しかもご丁寧に鍵まで掛けているようだ。
カチカチと鍵を解除してから……箱の隙間に棒を入れて配管を切断、火を放つ所の回路も同様に切ってから開ける。
自分でも必死に覚えたからな。手慣れたもんだ。
この程度の罠なら俺でも解除出来る。
中には何やら書物が入っていた。
「古代の書物のようだな」
ペラペラと中身を捲って中を確認。
「古代グレリス文字だな。えっと、魔法書みたいだ。生憎俺には魔力があまりないから発動出来ないが、翻訳してから国に提出するか?」
「ならば国の者に任せるのが良いだろう……しかし改めて思ったのだが、今まで君がこの手の書物の解読を行っていたが、こういうのは本来は賢者であるルセンの役目ではないのか?」
確かによく考えたら俺ではなくルセンがこういった代物の鑑定は行うはずだよな?
当たり前のように俺がしていたから疑問にも思わなかった。
賢者ってそういう専門性の高い特殊な鑑定とか出来たはずだ。
まあ俺が出来るんだから別に良いけど。
「呪いの解呪も君がやっていたな? そちらはプリーストであるマシュアの仕事ではないのか?」
「まあ簡単な奴なら聖水とかで色々工夫すれば解呪出来るんだよ。呪いって言っても結局は仕組みがある訳だしな」
子供の頃、知り合いに教わったんだ。
こういうのは知っていた方が便利だって言っていたっけ。
あの子も随分前にマシュアと同じく教会所属になったと聞いたけど……今何しているんだろうな。
「解読も解呪も君がしてくれるし、罠の把握から箱の開錠、魔物の察知やマッピング……ふはは、私と君さえいれば出来ない事は無いな。知っているかい、リエル。こういう状態をな、『無敵』と言うんだぞ」
「そうだけど……どこかで困るかも知れないぞ」
俺と二人になってからのルナスの言動はこう、なんか不安になるんだよな。
調子に乗っていたら失敗するっていう法則だ。
だからつい楽しい雰囲気に水を差す様な警告をしてしまう。
しかし、ルナスは気にした様子は無く、頷いてくれた。
「肝には銘じておこう。では次に行こうじゃないか」
っと俺達は移動をしたのだった。




