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165 お祈り手紙


 次は……攻撃魔法。魔力自体を編み込んで相手を締め付けるエナジーチェーン。

 魔力を力として雷を発生させるエレキ、そこから火を生み出して焼くパイロか。

 ここは基礎的な攻撃魔法で上位魔法も沢山あるようだけど……この本には上位の魔法言語が記されて居ない。


 で……回復魔法も念魔法にはあるのか。

 回復魔法か……覚えて損は無いけどもっと昔使えるようになりたかったな。

 まずは自己回復を行うセルフヒール。

 真っ先に自身の回復をするスキルから来るのか、プリーストのヒールとは違うんだな。


 次が触れた者を回復させるタッチヒールか。

 触れなきゃいけないって制約が困り所か。


 とりあえずここまでがこの本で覚えられる魔法みたいだ。

 もっと難しい念魔法があるのだろうけどこの本しか無いので覚えられない。

 一部ページが欠損しているし……独学で研究して形にするか、何処かで念魔法の書物を見つけて読んで覚えるか。


 そもそもクマールと念話出来るのは魔法と呼ぶのかこの魔法書の記述では分からない。

 おそらく魔法なんだろうけど、欠損部分にでも記されて居るんだろう。

 まずは練習あるのみでしかない。俺は念魔法の練習を続けた。




 こうして数日、念魔法の修練を続けてしばらく経過した頃の事。


「リエル、調子はどうかね?」


 王宮の練習場で魔法の訓練をしていると、ルナスがやって来た。

 ちなみにクマールは訓練場などで模擬戦などをして居る者たちの試合をじっと見ている。

 なんか色々と参考になると俺に伝えていた。

 舐めるように模擬戦をして居る者たちを確認している様は、同じ把握持ちからするとちょっと引く程の把握だ。

 見られている人が何度か俺にクマールの凝視する目が凄いって注意されたっけ……。


「見て分かるとおり魔法の練習をしている所だ」


「そのようだな」


 今はサイフロートの練習をしていて、物を複数浮かせている。


「初歩的な魔法が大半だけどな。次の冒険で役立てるように努力するさ」


 石弓を浮かせて連続射撃が出来れば貢献出来るだろう。死んだフリ中にも使えるので有用だ。


「うむ。頑張っているようで何よりだ。何かあったらいつでも言ってくれたまえよ」


「まあ……この辺りは練習あるのみって奴だから俺だけでどうにか出来るからな……」


 ルナス達はスキルを得た頃から練習して覚えた魔法をこの歳になって覚えたんだ。一朝一夕で追いつくのは難しいだろう。

 何より余り無い系統の魔法みたいだからなぁ。

 一刻も早く実用範囲まで習熟したいもんだ。

 パッと使える様にならないとな。


「そういえばシュタインの方はどうなってるんだろ?」


 迷宮を出て解散してから会っていない。


「先ほど王宮に居て私に声を掛けてきたぞ。上手いこと報告してドラーク残党の権力を剥奪する流れになって来ているそうだ」


「それは何よりだな」


 妙な人事で死地に向かわせるとか誰も達成出来ていない任務を達成してこいとか命じられる危険は取り除かれたか。

 具体的には魔王軍と呼ばれる魔族の者たちを指揮する魔王やその配下の四天王討伐なんかを命じられると厄介極まりない。

 いずれは戦わねばならない相手ではあるそうだけど、俺達だけで倒して来いとか言われて報酬後払いなんてされそうものなら実質放逐……追放も良いところだ。


「ルナスは最近どんな感じなんだ?」


「ああ、色々と持ち帰った品の報告と宮仕えパーティー同士の会議等、面倒なやりとりをさせられている。ドラークが迷宮から帰ってこない。死んだのだろうという事で抜けた穴をどう埋めるかという話がな」


 うんざりしたようにルナスが答える。


「国の重鎮達との話なんだが、奴らはネチネチと重箱の隅を突くようにこちらの報酬を無駄に削ろうとする割に迷宮で得た希少な品を献上しろと欲に塗れた顔をしていてな。少年にここは丸投げした方が私より上手く捌いてくれそうだと心の底から思うぞ」


 うわ……この手の連中っているのは知っていたけどそこまで露骨にやっているのか。


「影のリーダーである君はこの手の政治取引は得意かね?」


「……面倒な貴族様ってのは何処でも似たような事をするんだろうな。あまり弱みは見せず、相手の弱みを突く話術が必要なんだけどな……」


 確かにその辺りは俺よりもシュタインの方が向いているってのは否定しない。


「厄介極まりないな。ドラークの抜けた穴はそのままルナスが入れそうだけどどうなんだ?」


「そこは面倒にも他の宮仕え勇者が入り込もうと躍起になっている所だ。奴らは迷宮の最高深度で物事を図って居る癖に

新参者を排除しようとするのでな。この前の冒険で得た実績を見せてもミットロハール大迷宮の深層は簡単な所なんだったなと馬鹿にしてきたぞ」


 俺達が潜って居るミットロハール大迷宮は国内にある迷宮内の一つで他にも国内には何個も迷宮が存在する。

 迷宮毎に出現する魔物や仕掛け等に違いがある訳だ。だから迷宮毎に特色が……あると言えばあるのだけど深層は何処も困難な場所だ。

 少し前の俺達はドラゴン退治を達成した宮仕え冒険者の新米だった訳だけどな。

 それくらい出来る同じ宮仕え勇者からしたら、簡単な迷宮だと言えてしまう良い機会って事なんだろうな。

 で、ルナスが王宮に潜るように指定されている迷宮がミットロハール大迷宮だった訳で……迷宮の進行具合を報告してこれか……。


「実力が伴わずに口だけの者は重鎮以外にも王宮には渦巻いているという事だな。面倒なものだ。そこまで言うのならば今度君たちが潜って居る迷宮に遊びに行かせて貰おうと皮肉で返しておいた」


 ルナスも言い返すなー……見知らぬ相手だと口数が少ない割に切れ味が鋭く……しばらく喋ると残念な所が出てくるけど負けてないじゃないか。


「シュタインに任せなくても良さそうに聞こえるな」


「何を言う。私は奴らの無駄な虚勢で精神がすり減っているのだぞ」


 どこら辺が? とは思ったけど敢えて口にしない事にする。


「何より奴らはこちらの弱点だと思っているのか君をネタにグチグチグチグチと言って来てな。奴らが迷宮内で謀殺に来たのなら迷わず仕留めてやろうと心に決めたぞ」


 ……ここでも俺がネタにされるのか。


「フォーススキルが開花したので君達の理屈は通じんと言い返したのだが、君がまだ中級レンジャーですらないじゃないかと馬鹿にして来てな。今でも腹立たしい」


 あー……うん。

 冒険者の立場っていうのは国が認めている所が非常に大きい。

 ルナスはドラゴン退治での実績から宮仕え……勇者の中でも上位に位置する階級へと昇級した。

 これは勇者という職業が周囲の評価に大きく依存する。


 他の職業はその職業派閥が決めた基準で階級が決まる。

 例えばマシュアはプリーストとして能力やスキル構成、実績とかで中級に昇級されていたはず。なんか出発前に宮仕え勇者パーティーになったお陰で上級への内定が通ったとか言ってた覚えがあるし、ルセンはどうだったか忘れた。


 逆に俺は何だが、レンジャーの昇級は試験が行われる。

 能力や実績から初級レンジャーから中級レンジャーへの昇級がな。

 色々と冒険をして経験、Lv等の上昇に合わせてその都度、申請を行ったのだけど……審査で落されてしまうのだ。

 中級は四ヶ月……上級などは一年毎に昇級するための試験があるのだけどさ。


 まだ貴殿の能力が試験を受ける条件に見合っていない、貴殿の修練が実ることを祈っている、と言うお祈り手紙が自宅に来るんだ。

 俺の同期でそれなりにレンジャーをして生き残っている奴らは中級に昇級している。

 死んだ者も多いけど。

 だけど俺は何度も申請したのに受ける前の書類で落ちた。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 等級の審査担当部署も、賄賂まみれだったりするんじゃないですか? そう言うのを、どうにかして一掃する方が先では。 幽体離脱と把握と念魔法で、汚職の証拠を集めて暴くなど、できませんか。
[一言] レンジャーの大会とかないのですか? やっぱりスキル重視の評価なんでしょうね。 良いスキルが無いから中級になれない? 見込みがないという判断なのかな? 念魔法の万能性はレンジャーと相性がよさそ…
[一言] クマールは、把握で武術や剣術を勉強しまくって、 新たなクマール流格闘術を編み出してしまうのか。 念魔法で出来ることって、めちゃめちゃ幅広いね! まさかヒールや電撃まであるとは。 初級の魔法…
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