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150 ライドオン


「ヌマァ!」


 美味しいです、と満面の笑みを浮かべていたクマールがドヤ! っとばかりに胸を張っている。

 見た目は大きいけど中身は今までと変わらないクマールな訳だけどさ。

 タヌクマという魔物は一体どんな魔物なんだ! 東の地に生息する魔物ってだけで情報が無いからよく分からない。

 元々タヌクマという魔物はここまで大きくなるのか、もしくはクマールがおかしいのか。

 体躯だけならスラッシュクローベアという類いの魔物に近いだろうか?

 それの亜種にも見えなくもないけど……。


「ふむ……」

「四日前の段階で既に成長している記録をしっかりと残してるね」


 シュタインがペラペラと数日前の部分を勝手に捲って答える。


「さすがはリエルだね。そのマメな性格が幸いしてクマールの成長がわかりやすいね」

「ヌマァ」


 なんか俺を尊敬する意識をクマールが向けているけど、俺としてはお前の成長に驚かされてる所なんだが?


「私も昨日辺りまで気のせいか? と思っていたのだが、ここまで詳細に載っているとよりわかりやすいものだな」


 成長や変化というのは常日頃から見ていると気付かなかったりする。

 久しぶりに友人なんかと会ったりすると記憶と違ったりするだろう? アレは毎日顔を合わせる相手だと逆に日々の変化になれてしまって気付かないものなんだ。

 ただ、クマールの成長に関してはどう考えてもおかしい次元だ。

 それこそ、ファルコンとかの生まれたばかりの雛を育てるとかだと数日で最初の大きさより目に見えた成長をしたりするけどな。

 今のクマールは出会った当初に比べると如実だ。体長55センチだったクマールが今や見上げる程大きくなってるんだぞ。

 なんか体をよく動かして鍛えてるなーとは思ったけど大きくなりすぎた。何処をどうしたらこんな風になるのか……魔物の生態は謎に包まれている。

 一応レンジャーの座学で色々と学ぶし魔物知識として俺も本で色々と仕入れて居るけどさ。

 あの魔物屋……大嘘を吐きやがって……。


「ヌマー」


 クマールに念話をして聞いたところよく分からないって返事だった。一応家族の大きさは、今の姿よりも小さい……出会った頃の姿と変わりないみたいな意思を伝えてくるけど魔物の生態は本人に聞いても完全に分からないだろう。


「これもクマールのLvが大きく上がった影響と言うべき物かもね。これもある意味、研究結果として国に資料提出に使えそうだよ」


「クマールを購入した当初の目的であった荷物持ち目的の魔物と言う意味は結果的に正解であるぞリエル」


 今のクマールの大きさならば俺が背負っているバックパックや大型のリュックなど平気で持ち運べる。

 当然の事ながら既に予備にしていた大型リュックをクマールに背負わせているんだけどさ……積載軽減のスキルもあって、今やクマールは立派な荷物運搬が出来る魔物として成長した。

 もう俺よりも荷物を持つことはきっと出来るだろう。それほどの体躯になっている。

 これは喜ぶべきなのだろうか?


「クマール。お前は本当にタヌクマだったのか? 童話などで本来の生まれとは異なる似た魔物という話があるのだぞ」


「あ、聞いた事あるね。迫害された中で育って大人になった際に全然違う姿に成長するって奴だね」


 ああ……童話にあるな。


「ふふ、大きくなってからすり寄ってきても今更遅いという奴だな」


 無理矢理繋げなくて良いと思うぞ。そのネタを。

 なんかそう思うと童話とかが性格悪く感じてしまうだろう。


「マシュアやルセンみたいに迷宮内で魔素を大量に摂取した所為で変化してしまった可能性が捨てきれないな……クマールの体がおかしくなってないか心配だ」


「ヌマー」


 心配してくれるのは嬉しいってクマールが喜びの感情を向けてきている。

 そりゃ心配するだろ。俺が責任を持ってお前の世話をすると決めているんだから。


「ヌマ!」


 俺の期待に応えられるように頑張る! って敬礼しなくて良いから。


「ヌマー」


 モフゥ……っとクマールが俺を抱きしめてくる。

 苦しくない絶妙な力加減だ。


「ふむ……正直リエルを抱きしめるクマールを少々私は羨ましいと感じるぞ」


「リエルが丁寧に世話してるからクマールの毛皮、ふかふかだもんね」


「うむ、昨日リエルが寄り添って寝ていたが寝心地良さそうだったぞ」


 ああ、俺の背もたれになっていた様に俺の隣で天然毛布とばかりにすり寄ってくるんだ。

 クマールも綺麗好きだから毛並みは綺麗にしてるし、獣臭さも余りしない。

 お腹のさわり心地はふかふかで張りがある……小さい頃と変わらない。


「ヌマー」


 ポンポンとクマールが横になった体勢のまま俺にお腹の上に載って一緒に寝たいって意思を伝えてくる。

 ……俺はお前の抱き枕か? お前のお腹の上、寝心地凄くよさそうだけど。

 死んだフリスキル持ちだから寝入りは良いし何処でも寝れると言えば寝れるからな。

 それはクマールも変わらないか。


「いやー、なんて言うかリエルらしいよね。昔リエルが世話してた村の使役魔はみんな健康的で何かあったらすぐに対処してすくすくと成長してたもんね」


「子供の頃の話だろ。専門のスキル持ちを持った大人に比べたら大した事無い」


「使役魔も嫌な顔せずに世話してくれている相手って事でリエルには懐いていたと僕は思うけどなー」


「気のせいだ」


 現にレンジャー見習いの頃は資質無しって扱いだったしな。

 クマールがここまで成長したのは間違いなくLvによる影響だろう。

 立派になったもんだなー……愛玩目的だったのに立派に荷物持ちの使役魔へと成長してくれたと思う他ないか。


「どうやら私達の気のせいではないと証明出来て何よりだ」


「何よりだで片付けて良い問題か?」


「ま、君と同じくクマールもLvが上がって十分強くなりつつあると言うことだ。戦闘に関して……少年、クマールはどの程度力を持っているのかね?」


「魔物だからね。リエルの体に比べたら言うまでも無く力は上だよ」


 ワーウルフにゾンビ状態になると変化させられて戦わされているけどな。

 クマールもそこは変わらない。

 爪で魔物を切り裂くゾンビクマールの方が迫力があるとは思っている。


「ヌマー」


「地上に戻った後、どう扱えば良いのやら……普通に馬とかと同じ扱いで良いのか?」


「良いんじゃ無いか? レンジャーであり考古学者である君が世話をして居るで通じるだろう?」


 まあ、ウルフの所持者とかも当たり前の様につれて居るから良いんだけど……ベアー系の魔物を連れてる感じで問題は、無いか。


「もうクマールなら荷車とか引けそうだね」


「積載軽減のスキルを持ってるから余裕で引けるだろうな。馬車も引けるだろうさ」


「迷宮は高低差が激しいから中々難しいけどね」


「リエル、君はクマールの背中に乗せて行って貰えば良いのでは無いか?」


「ヌマ! ヌマヌマ!」


 任せて! 乗せたいです! ってキラキラした瞳で意思を伝えて来た……。


「こういうのはシュタインが向いてないか? 一番小柄なんだし」


「乗せてくれはするだろうけど、そこはやっぱりクマールの気持ちを考えるとリエルじゃない? 僕は平気さ」


 まあ、もう背中に乗れるのは分かってるけどな。


「ヌマ」


 クマールがどうぞとばかりに座り込んでいる。

 ……試しに背中に乗る。


「ライドオン!」


 ルナスが謎のかけ声を放ったのは無視だ無視。

 ……俺の積載軽減とクマールの積載軽減の両方が作動しているのがわかる。


「ヌマ!」


 軽いです! これなら一日中でも乗せていられます! ってクマールが意思を伝えてくる。

 わー……男が体重軽いとか思われるのって嬉しくないな。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ライドオン!じゃねえよwwww
[一言] 油断するな もうすぐ美少女化するでありますぞ
[一言] 迷宮の出入り口とか通路とか部屋の出入り口に引っ掛かったりしない?
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