143 火山帯
「そうだね。出来れば41階以上の魔物の素材を持ち帰ればドラーク残党の策謀は消し去れるよ」
「という訳だ。どこまで潜るかはルナスが決めて良いと思う」
「では今回の依頼期限まで潜るのがキリがよさそうだと私は判断するぞ」
ファイアジュエルドラゴンの討伐依頼の期限までに帰るか。
確かに切り上げるのに丁度良さそうだ。
「僕のルナスさんの偵察任務の期限もあるけどね。一旦報告しないと奴らが色々と足場固めもしかねないし……そこそこ実績を稼ぐ程度で帰るのを提案するよ」
「む……まったく、面倒な物だな。少年、君がここで一人で帰って報告に戻れば良いだけではないか?」
「つれないなー。せっかくリエルの他にクマールという無敵ゾンビが手に入った所で僕に帰れなんて酷な事を言うのかい? なんだかんだこの階層から帰るなんて僕一人じゃ無理じゃないけどきついよ。まあリエルと一緒なら良いんだけどね」
「それは出来ない相談だな」
ルナスとシュタインが謎の牽制を始めたぞ。
「ここは影のリーダーであるリエルにどうするか決めてもらおうではないか」
そこで俺に決定権を持ってくるのか?
決めづらい案件を丸投げしたの間違いじゃないのか?
まあいいか。
ファイアジュエルドラゴンの討伐は……余裕を持った任務ではあるけれどドラーク残党の問題は早めに解決しておくに越した事はないよなぁ。
となると41階辺りを攻略してルナスが王宮でも希有な逸材である事を証明して戻るのが無難って所か。
「はぁ……それじゃ限られた期間で潜れる所まで行こうか。シュタイン、探索をある程度の所で区切るんだからその分、上手く立ち回れよ」
「当然じゃないか。あ、リエル達があの元仲間達にしたかもしれない内容は報告はしないから安心してね」
「いつまでも覚えていて、いざって時に強請るなよ」
「何言ってるのさ? こんな強い力が使えるんだ。仲間を謀殺したと密告したってもみ消せる次元だよ」
なんとも腹黒い返答というべきか。
俺の死んだフリとルナスの勇者の怒りによる戦法はそれほどに価値があるって事らしいなぁ。
「クマールの死んだフリも追加されるのだ! 私の強さがどこまで行くのか楽しみだぞ! ふはははは!」
確かにルナスの勇者の怒りはどこまで行くんだろうな。
「ヌマ!」
って形で俺達は35階を探索……マシュア達が暴れたせいで少なくなってしまった悪霊達の巣窟を抜けて当初の目的地である36階に到着した。
36階は火山帯で、階層入り口周辺は過ごしやすい山脈地帯みたいな場所であり、水場もある。
割と安全な場所でもあるので拠点を確保して行動する事も可能だ。35階の迷宮部分を抜けた所で感覚的に昼過ぎを回っていた。
「おや、ここには丁度良いお湯加減の温泉が湧き出ているのだな」




