142 物体浮遊
「念魔法の魔法書ってあるのか?」
「どうだろうね。王宮所属の勇者やその仲間にその手のスキル持ちがいるかどうかを完全に把握はしてないけど、珍しいスキルなのは間違い無いよ」
厄介極まりないな。
ただ、念……生命力みたいな感覚も同時に分かるようになった気がする。
今までよりも出来る事が増えたんだ。
なんとなく嬉しく思うし、もっと出来る事が増えたと喜ぶべきだ。
「とは言っても基礎の詠唱不要の魔法が何個か意識すれば使えると思うよ? さっきの意思を伝えるとかもその一種だろうし」
詠唱不要の魔法か……何かあるか?
と、意識をしていると意思の中に手みたいな感覚がある事に気付いた。
そっと地面に落ちている小石を意思の手で掴んでみる。
うっ……なんか力が消費される様な気がする。
これが魔力を消費するって奴だろうか。
そんなちょっとした脱力に合わせてふわりと小石が持ち上げた範囲で浮かぶ。
「お? 物体浮遊の魔法だね。魔力に応じて物を動かす魔法だよ」
「なるほど、こう言った事が出来る様になるわけか」
手が増えた様な感じだな。
手数を増やすって意味では便利かも知れない。
把握との相性も良いし、結構遠くまでこの手が伸びるのが分かる。
その分、魔力の消費が大きくなるようだ。
余り長時間使用していると俺の魔力がすぐに無くなりそう。
ヒョイっとクマールを持ち上げて俺の目の前まで運んで抱き上げる。
「ヌマァ」
「どうやらやり方は分かったみたいだね」
「ああ、他に何が出来るかわからないけど基本的な事はわかった」
スキルを授かっても最大限使いこなすには色々と練習と学習をしていかないといけない。
「やったなリエル!」
「そうだな。これでルナスの言っていた今回の最終目標は達成したな」
俺とクマールのフォーススキルの開花が迷宮に潜る事での最終目標だった。
「うむ……」
あ、ルナスが何を言いたいのかスキルを使わなくてもわかるぞ。
目的達成をしたから依頼を達成したらすぐに帰るのが良いのだが、もっと深く探索をして勇者の怒りを堪能したいのだろう。
「今回は他にファイアジュエルドラゴンの討伐と40階以上の探索だろ。俺とクマールの方はそこまで気を使わなくて良いから行こうか」
「良いのか?」
「今回の目的はそっちもあったからな。王宮での立場を確保するために実績は稼いでおくのが良いんだろ?」
シュタインに確認を取る。
マシュアとルセンの悪霊はともかく、ドラークの残党が暗躍しているんだ。
今は備えておいた方が良い。




