141 念話
「リエル、さっきの奴をもう一度私にしてみてくれ。おそらく今度は受け取れると思うぞ」
「わかった」
俺はルナスに意識を向けて頭だけで語りかける。
『聞こえるかー?』
「うむ。聞こえるかー? っと私に聞いているな」
『考えが届くって事か……思考がダダ漏れになると困りそうだが』
「声にするのと同じように聞こえない様に出来ないのかい?」
シュタインの言葉に、相手に発さない……頭の中にある発声器官を使わずに考えて見る。
えっと……今夜のご飯はパンプキンパイ。
「さて何か聞こえた?」
「いいや? 何か考えたのかね?」
「なるほど、頭の中の声も出さずにする事も出来るのか……クマールの考えというか意思も感じ取れたんだが」
「ヌマー」
俺が新しい力に目覚めて嬉しいとクマールは俺を祝福してくれている。
『ああクマール、俺はお前のフォーススキルがハズレと該当されるスキルなのを凄く同情しているんだぞ……お前は良い奴だな』
「ヌマ……」
俺の意識の声にクマールが照れている。
『シュタインがフィフススキルに関する話をしていたな。スキルスタックがフォーススキルならば次が出る可能性だってあり得る。諦めずにやり遂げるぞ!』
「ヌマ!」
クマールは俺が気に掛けてくれている事を喜びの感情で答える。
うん。具体的な声を明確に聞き取れはしないけどなんて思っているのかわかる。
「相手の考え……読心術系も備えているという事だね。ただ、読み取ろうとすると相手も何か感じるから安易に使わない方が良いね。さっき僕達に声を届けようとした時みたいに何か当たる感覚がするんだと思うよ」
「読み取られないようにする事を人は無意識にしてしまっているという事だな」
「そうなるね。まあ、スキルの習熟が進めばもしかしたら気付かれずに読み取るとか出来る様になるかも知れないけどね」
「便利と言えば便利なのか……?」
「君が死んだフリ中も声を出せれば色々と話が出来て良いと私は思うぞ」
ああ、そう言った使い道があるのね。
「どちらにしてもリエル、君も魔法資質が開花した訳だし、意思を相手に伝えるのは副次的な効果に過ぎないよ。正式に魔法として具現化させるには魔法書などで詠唱を覚えないとね」
あくまで開花した魔法資質って事なんだろうな。
似たようなのだと火魔法ってスキルを授かった魔法使いは副次的な効果として火の扱いに長けるようになる、とある。
ルセンのマジックブーストというスキルは魔法適性が全属性使える資質が開花するって事だったはずだ。
ただ……この念魔法の副次的な効果までは使えないってだけで。




