14 通常攻撃
「そうだろうそうだろう。どうかね? 君が私に力を授けている状態の私の姿は」
「俺は死んだフリしてるだけなんで……」
「はは、謙遜はしなくて良い。君の死んだフリが解除された後の私のハイ・ホーリーファイアを見るが良い」
ボッとルナスは普段見覚えのあるハイ・ホーリーファイアを壁に向かって放って見せた。
先ほどのようなおかしな大きさではない。
威力も至って普通だ。
「う~ん、実にしょぼい。話にならんな」
いや、言いたい事はわかるけど自分で言うなよ。
「二回も同時に唱えていたんだよな?」
「ああ、二回で仕留めきれるのが先ほどわかったからな。少なくともグレーターデーモン程度の相手なら奴らが1動く間に4は動ける。よし、今度は近接で戦う所を見せよう。魔法だけでは疑わしいと思うのもしょうがないのでな」
この言い方だと同時に魔法を使うのも二回が限界ではなさそうだな。
そうして次のグレーターデーモン……今度は5体のグレーターデーモンが通路を抜けた小部屋で待ち構えていた。
なんだあの数。
本来であればかなり危険な状態だ。
迂回するなり、狭い通路を使って囲まれない様にする、といった工夫をする事になる。
「では見ているが良い」
死んだフリをして幽体離脱状態で見ているとルナスは残像を残しながらグレーターデーモン達に近づいて……通り過ぎていった。
「――!?」
ズルン……っとグレーターデーモンが4体ほど横に斬られて一瞬で倒されてしまった。
早すぎて俺には完全にルナスの動きを追い切れなかったんだけど。
それほどの早さだった。
追いつく事など不可能な速度……。
「これで、最後だ!」
と、ルナスは一拍してから残ったグレーターデーモンを仕留めてしまった。
これは一方的な蹂躙だ。
圧倒的に力量の劣る相手に対する戦闘がこんな感じだ。
一撃で仕留めるなんて不可能な相手を一撃で仕留めていくのは本当、何かの冗談にしか見えない。
超常現象……まるで奇跡って奴だな。
まあこれが奇跡なら、奇跡の大安売りだけどさ。
魔物を倒し終えたので死んだフリが解除される。
先ほどの光景が嘘じゃないと証明するかのようにルナスが立っていて……持っている剣にグレーターデーモンの血が付いていた。
「口ほどにもないのに経験値は大量に入る……実に素晴らしいな。歯ごたえを求めてもっと深い階層に行きたい所だ」
「あれを見ちゃった以上、気持ちはわかるけど慢心は油断を生むぞ」
「そうだな、君の言う通りだ。気を付けよう。だが、慢心したくなる程の強さなのだよ。やはり私の決断は間違っていなかった」
確信しないでほしいんだけど……とは思うんだけどなぁ。
とはいえ、あの強さになるんじゃそうなってもおかしくないのかもしれない。
俺なんかに媚を売ってまで手に入れるだけの強さが、確かにあった。
これだけの力が手に入るなら……俺とルナスが逆の立場でも同じ事をしただろう。
自分の弱さを知っている人なら尚更そう思うはずだ。
「ちなみに宮仕えの声が掛かった時のドラゴン、今ならどれくらいで倒せると思う?」




