137 スキルスタック
「おや、リエルは私に彼女達を葬って欲しかったのかね? 君は優しい男だな」
「優しい男は元仲間の悪霊を秒殺なんて願わないだろ。自力で成仏とか説得するなり強制成仏を願うって」
「その辺りの判断が付く所で優しい方だと思うけどねー……ま、リエルの価値をまるでわかっていない奴らには良い末路だと僕は思うけどね」
「ヌマ……」
クマールの複雑な顔付きが酷く印象に残る勝利だ。
「これで彼女達もあの世でリエルを馬鹿になど出来んはずだ。私が屠るよりも良い方法だと思うぞ」
「俺と言うよりシュタインがやったと思うんだけど?」
「そこは解釈の違いというモノだ。私は君が無能と罵る愚か者に自身の力を見せつけて報いを受けさせたんだと判断している」
……もうマシュア達と再会する事はこの世にいる限りは無いだろう。
そう言った意味だと雪辱を晴らしたとも言えるのかも知れないけど……。
「これにて一件落着ってね。あの集合体、結構色々と溜め込んでいたみたいだね」
イヴルスピリットを倒した後には色々と物が落ちているのが確認出来る。
闇の力が凝縮された結晶体とか、剣や短剣等の武器だ。
呪いが掛かっているけど、この程度ならシュタインが解呪出来るだろう。
「ヌママママ……」
って所で勝利ムードの最中に声を上げていたクマールが小刻みに震えているのに気付いた。
「どうしたクマール? 大丈夫か?」
俺が声を掛けるとクマールが俺へと顔を上げて見上げてくる。
「ヌマ!」
っとなんか満面の笑顔、もしかしてお前までマシュア達を俺の体が倒した事を喜んでいるのか?
そう思ったのだが、違うのが分かった。
「ヌマー」
ピーンとクマールの体から小さな光のような物が放たれて俺に当たる。
「うっ……」
すると何か……俺とクマールの間で繋がったような不思議な感覚が起こり、把握出来る範囲が突然広がった。
頭に入る情報量の大きさに驚いてしまう。
「リエル、どうした? クマール、何をした?」
「い、いや……なんか把握の範囲が突然広がって……」
「クマールがリエルに何かしてたよね? それで把握の範囲が広がる? もしかしてフォーススキルが開花したんじゃない?」
「おお? それは良いタイミングではないか? リエル、クマールのタグでチェックすべきだぞ」
「ヌマ!」
ってクマールが立ち上がって自己主張をしているので、クマールの登録タグを取り出して確認してみる。
ファーストスキル・把握。
セカンドスキル・死んだフリ。
サードスキル・積載量軽減。
フォーススキル・スキルスタック。
おお!
クマールのスキルが増えてる!
けど、確かスキルスタックって……。
おや……? クマールの様子が……。