136 霧散
「リエル、気分はどうだ? 君を馬鹿にした連中を自ら処分する気持ちは」
ルナスが我が事みたいに高みの見物してるけど……うーん。
せめて自力でマシュア達を倒せたらこのような気分にもならなかったのかな?
「リエル、笑えるだろう? 君を馬鹿にした奴らに相応しい末路さ」
シュタイン、そんな笑えば良いと言われてもな。
楽しんでいるのはお前の方だろう。
というか二人して返答を求めないでくれ。
「くそ! リエルの癖になんなんだ! 全く攻撃が効かない!」
「ちょっと調子に乗ってんじゃないわよ! ムキィイイイイ!」
マシュアがヒステリックに叫びながらイヴルスピリットとして反撃を繰り返すけれど俺の体は本当に無敵なんだろう。
まるで堪えておらず猛攻を続けている。
「痛い! やめなさいよ! 無能のくせに私を傷つけて良いと思ってんの! ギャアアアアア!」
「やめろ! 何をする! 魂だけになってもこの世に残り続ける英知を宿した有数の賢者である俺に凡夫であるお前がこんな罪深い事をして良いはずが無い!」
そうしてイヴルスピリットを霧散させ、マシュアを引きずり出した俺の体はマシュアと近くで殴られて腰を抜かしていたルセンの首根っこを掴んで持ち上げて力の限り握りしめる。
「リエルなんかに……リエル如きに私がやられるなんてあってたまるもんですぁあああああ! くっそおおおおおおぉおおお!」
「や、やめろぉおおおおおおおおお!」
「どうだ二人とも? リエルは強いだろう? わかってくれたかね? では今度こそ、さらばだ」
これは俺の強さって事でカウントしてはいけないと思うんだが?
「それじゃお二人さん、今度こそあの世に行ってね。ばいばーい」
言い出したシュタインは無邪気且つ残酷に宣告するな。
やらかしたのはお前だ。
バシュン! っと俺の体が二人の首を握りつぶすと、二人は霧散した。
どうやら悪霊としての二人を仕留めたらしい。
「ウグアアアアア!」
勝利の雄叫びとばかりに俺の体が吠えた。
何だろうな……戦闘終了って事で気持ちを切り替えなきゃいけないのに、この虚しい気持ちは。
「ヌマーー」
ん……なんか心というか何かが湧き上がってくる感覚。
まさかマシュア達を仕留めた事を俺は心の何処かで喜んでいたのか?
「やったねリエル! これで君を馬鹿にした奴らは君が報いを受けさせたよ」
なんかおかしい感覚がするけど……とりあえず死んだフリを解除だ。
死んだフリを解除した事で俺は体に意識が戻る。
「何が報いだよ……マシュア達に無駄に苦しみを与えてさ。ルナスが魔法で秒殺してやった方がまだ慈悲深い気がするんだが……」




