135 対魔ゾンビ
「くっ……調子に乗るな! メガフレイム!」
ルセンがそんな俺の体に向けて炎の塊を放つメガフレイムの魔法を放ち、命中するのだけど俺の体は……当然の事ながら死後の無敵状態を維持しているので炎の中を平然と歩いてルセンに近寄り殴りつけた。
「うぐああ! なんだこの速さは……まるでルナスの様に素早い。おかしい! そんな強さに差は無いはずなのに!?」
「あの頃の私達と同じと思ってもらっては困るな。今のリエルは無敵だぞ?」
そりゃあ文字通り無敵ゾンビなんだからそうだろうよ。
なんて言うか……これは反則だろ。
「リエル如きが私の手を煩わせるなんて舐めた事してんじゃないわよぉおおおおお!」
マシュアがここで再度俺の体への攻撃を始める。
「なんていうか、何も分かってないって所でプリーストには全く向いてないね。リエルを無能と馬鹿にするより自身の無能さと三流プリーストであった自覚を持つべきだね。悪霊としては……そっちも無能か」
後でシュタインが言った事なのだけど、俺の体の状態をマシュアが理解出来ないというのは話にならないそうだ。
アンデッド状態なのはプリーストなら分かってもおかしくないらしい。
で、悪霊として無能というのもシュタインの気配に気づけない点での判断だそうだ。
墓守で死霊術士のシュタインは悪霊に対しては他の追随を許さない優位性を持っている。
ターンアンデッドすらも使えるし、悪霊……死霊は使役される駒みたいなもんだ。
ある意味、天敵なのだが、その気配を出したにも関わらず気付かなかった時点で話にならないんだそうだ。
自我の無い悪霊はシュタインの気配を感じて何かしらのリアクションをするって話だ。
「おかしいわ! なんでリエル程度が私達を直接攻撃出来るのよ!」
まあ確かにそうだ。
マシュア達、悪霊には物理攻撃の効きが悪い。
本来は魔法効果を宿した武器などでの攻撃が推奨される。
なのだが、ゾンビ状態というのはそれだけで属性効果があるし、シュタインの魔法で動いてもいるフレッシュゾンビって事で悪霊達には効果的な攻撃が可能なんだとか。
ほら、光と闇を同時に内包しているらしいし、光の部分を使っている的な感じなんだろう。
単純にゾンビ状態で二倍の力を持ちつつ属性的な相性もあってマシュア達には大ダメージが入っているって事らしい。
まあ、そんな訳で止まる事を知らない無敵ゾンビの俺の体はマシュア達イヴルスピリットを千切っては投げ千切っては投げを繰り返して……一人で蹂躙していく。
客観的に暴れ回る俺の体を見るってさ……なんとも微妙な気持ちにさせてくれるなぁ。
俺を馬鹿にして話すら聞きもしない二人だけどさ……俺の体が殴り飛ばしているのは喜べば良いのか、悲しめば良いのかよくわからない。




