131 無能の理屈
「随分と元気な様子なのは……闇の才能は一流だったのかもしれんな」
「なんですってー! ムキィイイイ! 見習い時代にちょっと優秀だったからって調子に乗ってんじゃないわよぉおおおおおおおおおお!」
コイツら……ルナスとシュタインの連携が凄すぎる。
本当、似たもの同士だな。
「そんなのはね! 冒険者になったら実力が物を言うのよ! 宮仕えになるほどの逸材であった私たちが証明してるのよ! 努力の末に得ないと何の意味も無いのよ!」
「そうだそうだ! 才能があって、しっかりと力を身につけたモノこそが許される極致が宮仕えという立場なんだ!」
ルセンがここでマシュアの言い分に便乗し始める。
「それを才能の無い、いざって時には役に立たない荷物持ちの無能が甘受して良い立場じゃないって事だ!」
と、マシュアとルセンの悪霊がここぞとばかりに俺の体を指さした。
ああ……ここで俺に狙いが定められるのね。
「ヌマァアア!」
クマールがここで怒りの声を上げて毛を逆立たせる。
俺の事を罵倒していると分かって怒ってくれているんだな。
「つまり僕は才能頼りの甘やかされて育った戦力外でリエルに至っては全てにおいて役に立たない無能だと言いたい訳だね……なるほどなるほど、ルナスさんの気持ちが痛いほど分かったよ」
うんうんとシュタインはクマールを宥めるように屈んで撫でながら答える。
「こりゃあとんでもなく愚かな連中だね。宮仕えになれたのが自らの実力だったと本気で勘違いしているって事か。リエルの真価をまるで理解出来ないとはね」
「あら? エリート様はそんな無能の肩を持つって言うの? ふふん、そんな奴を庇っている時点で程度が知れるわね! 宮仕えにはふさわしくないわよ」
「実のところ僕の方が宮仕えって意味じゃ先輩なんだけどね。これでもそれなりに腕は立つ方だし」
シュタインは教会所属の特殊部隊員なんだから……そりゃあ王宮にも顔が利いて普通の冒険者より立場は上だよな。
しかも28階までずっと俺達の後ろを潜伏して来れるだけの確かな腕前がある。
ぶっちゃけ、マシュアよりもいろんな面で上なのは間違い無い。
呪いの解除方法とか俺に教えてくれたのはシュタインだし、プリーストの魔法も使えるそうだ。
「ふん。そろそろ話をするのも嫌になったわ。さっさとアンタ達に報いを受けさせてやらないとこっちの怒りが収まらないわ!」
「おや? もうやり合うのかね? 確かに話をする意味はまるで無いな。リエルの価値を君達は死んでも気付けなかった様なのでな」




