130 エリートアピール
え? そんな事あるのか?
うーん……マシュアって夢見がちな所があるって話だから、きっと脳内設定がここで出てきているって所か。
まあそもそも悪霊だし、色々とおかしくなっているのかもしれない。
で、後ろでルセンがうんざりした顔でマシュアのヒステリックな声を聞いている。
お前は怒りで震えが止まらないんじゃなかったのか?
「生憎と私は悪霊と会話するという奇妙な状況に遭遇してしまっていてな。マシュアとルセンの悪霊……残留思念かね?」
「私達は王宮所属に至れた程の有能な人材なのよ! 死んだ程度で容易くあの世に行くはずないじゃない!」
「そうだ。無能な連中はあの程度で即座に消え去るが、俺達は特別な存在なのだ! ルナス、前の俺達と思って侮ってもらっては困るな」
「死んで日の浅い悪霊って自我が残っている事があるって話があるから、それかな? 随分と状態良く残っているね」
と、シュタインが呟くとマシュアはシュタインに顔を向ける。
「あら? ここまでくるのに随分と時間が掛かったと思ったけど、連れてきたのは……そこにいる奴と妙なペット? はん! 私達を抜けた穴を補うには足りなかった様ね。随分と無能そうじゃない! 胡散臭いったらありゃしないわ」
マシュアはそう言いながらシュタインとクマールを鼻で笑う。
「ヌマー……」
馬鹿にされているのを理解したクマールが不愉快そうに鳴く。
「無能で胡散臭いねー……マシュア=ハーフエル。僕に覚えが無いのかな? エリートの僕は君の事を知ってるよ。君、教会の問題児としてよくシスターに注意されていたからね」
っと、シュタインがチャリっと懐から何やらシンボルを取り出してチラチラとマシュアに見せつける。
というかエリートである事を強調して挑発した。
マシュアはその辺り、かなり敏感だから怒りそうだな。
「んん……あ、アンタ……いや、あり得ないわ! そんな事絶対にあり得ないわ!」
「僕は覚えてるけどねー」
「おや? シュタイン、マシュアと知り合いかね? 君と素敵な思い出があるとなると悪い事をしたな。教会所属となると可能性はあったか」
「とんでもない。どうやら彼女は一流やエリートって言葉が好きみたいだけどね。真のエリートは僕ってだけさ。何せ教会の秘蔵っ子だからね」
ここでシュタインが露骨にマシュアに向けて立場が上アピールを行う。
まあ……マシュアが教会でエリート、一流だった的な話は宮仕えになった辺りで連呼し始めていたけど、とてもそうは感じなかった。
どちらかと言えばルナスのお陰で成り上がったプリーストって評価だったと思う。
逆にシュタインは……態度というか話を聞く限りかなり手厚く育ててもらっていたっぽいしな。
それに比べると見習い時代のマシュアって性格に難ありって評価……後で調べた経歴からして間違い無い。
「教会所属のプリーストの癖に悪霊としてこんな所にいるなんて嘆かわしいね」




