129 涙が止まらない
死んだはずのマシュアとルセンとの再会に驚きが隠せない。
というか、めちゃくちゃ会話が通じている様に見えるけど、どういう事だ?
「おや? 君達は……その姿は一体どういうことかね?」
ルナスがシュタインに視線を向けるとシュタインは軽く肩を上げて笑みを浮かべている。
何があってもルナスの都合が良いように報告するさって態度だ。
ルナスも頷いている。
気が合う腹黒な二人だから目だけで会話しやがった。
「一体どういうことかね? ですって! アンタの所為でしょうが!」
「そうだ! ルナス! お前の所為で俺達がこんな事になったんだろうが! 怒りで震えが止まらんぞ!」
マシュアとルセンが怒りの形相でルナスを指さして言い放った後、マシュアがオイオイとすすり泣きを始める。
「どうして私達がこんな目に遭わなきゃいけないのよ。無能なリエルが生きていて有能な私達だけが死ぬなんて……この世の理不尽に涙が止まらない……」
まるで被害者の様に涙を流すマシュアだけど、同情よりも不快感が凄い。
なんだその理屈……お前等がドラークと結託して俺を殺そうとして、ルナスが返り討ちにしたんじゃないか。
よくそんな理不尽な事をやらかそうとして被害者面して涙を流せるな。
というよりマシュアとルセンの悪霊がこんな所にいる事の方が驚きだ。
ただ……もしも居たら嫌だなって形での再会だ。
脳裏を過ぎる嫌な感じがそのまま現われるとは。
ん? ルナスが何か言う気だぞ?
「ハハハ、実に自分勝手な言い分で悪霊らしいではないか。ならばずっと泣いているがいい」
ルナスの口から発せられる言葉の刃が止まる所を知らない。
よくそんなスラスラと追い打ちの言葉が出て来たな。
……味方と敵に似た様な感想を抱くのは何故だ?
勇者の怒りは口にも左右するのか?
いや……よく話すようになってからわかっているけど、間違い無くルナスの素だろう。
「何がおかしいのよ! おかしいのはアンタよ!」
「おや? 涙が止まらないのではなかったのかな? リエルを殺そうと暗躍したのだからふさわしい末路だろう。それは世間一般的に自業自得と言うのだぞ」
本当、その言葉の鋭さは感心する。
マシュアとルセンってこう、俺が何を言ってもまるで話を聞く気がないけどルナスの言う事は一言一句激昂するんだ。
やっぱり言葉には切れ味があるって事なのかな?
それとも単純に強さによる発言力って奴だろうか?
「違うわよ! 間違っているのはアンタ達とこの世の中なのよ! 私はまだ本当に死んじゃいないわ! アンタ達に報いを受けさせれば私達は元の体に戻れるのよ! それが宮仕えである一流の私達が起こせる奇跡なのよ!」