128 遭遇
そこで気付いた。
「なんか魔法が仕掛けられた紋様があるな」
35階に入った所の壁に何か人の手で仕掛けられた文様があるのに俺の把握が感知する。
これ……何だっけ?
魔力が俺には無いので紋様で判断しないといけないんだけど、紋様自体が汎用的で読み取れない。
というより紋様に更に何か無意味な文字を重ねて分からない様に偽装されていると言うか……。
「魔力が走っているのはこんな感じだね」
シュタインが文様に掛けてある魔力の部分を描いてくれる。
「遠隔監視の魔法だっけ?」
「だね。誰かが設置したまま消し忘れたって事かな?」
「どんな魔法なのだ?」
「ルナスも前に見た事あるんじゃない? 水晶玉で遠くの映像を見せるって奴」
「魔法使いや占い師が建物の見張りをする際に使う奴だね。こんな所に仕掛けるって悪霊に魔法の罠とか仕掛けたりしていたのかな? 掛かったか確認する用みたいに」
あり得る戦術だな。
戦いづらい魔物は罠を大量に設置した通路の先で待ち受ける、という無難な戦術がある。
上手く掛かったかどうか、魔法使いはこの魔法陣で確認するんだ。
「まあ、この階層に本物の冒険者がいるかも知れないのがわかったのは収穫かな?」
「注意して行かないとね」
なんて話をしながら俺達は探索を進めて行った。
数が少ない時は近接とフレッシュゾンビの俺が殴りつける形でさ。
やがて……ぱったりと悪霊達と遭遇しなくなった。
「おかしいな……気配が全然無い」
「先客の凄腕勇者様がここで悪霊狩りでもしてしまったんじゃない?」
「さっきの仕掛けからしてあり得そうな話だなぁ……腕前を磨いている勇者パーティーとかさ」
「ふむ……面白みがない展開であるな」
なんて思いながら、30分ほど悪霊と遭遇すること無く進んで行くと……把握の感知範囲にちょこっと悪霊っぽい反応が引っかかる。
その後方に……なんだ? 妙に歪な気配があるぞ。
「おやおや、大物が潜んでそうだね」
「みたいだ。この大物の所為で悪霊達が姿を隠しているとかか?」
「かも知れないね」
「リエル、少年。ここまで味気ないのだ。大物を仕留めても良いだろう? な? な?」
暴れ足りないらしく、ルナスが声を上げる。
拍子抜けしたから鬱憤が溜まっているんだろう。
「まあ、行ってみても良いんじゃない? 僕も暴れ足りないよ」
「お前の場合は俺を暴れさせたいんだろうが」
「バレた? どっちにしても次の階層を見つけないといけないんだから行くしかないよ」
「はいはい。じゃあこっちだな」
「ヌマー」
って形で俺達は進み、遭遇2分前に俺が死んだフリでフレッシュゾンビ状態となって……大物の近くにいる悪霊と遭遇した。
そこで出てきた相手を前に俺とルナスは絶句する事になってしまった。
「いたいた! やっと来たわね!」
「フヒヒ……やはり嗅ぎつけて来たか」
そこに居たのは半透明の悪霊の……マシュアとルセンだった。




