126 独特の気配
「……」
なんだろうな。
そう聞くと俺もルナスが庇ってくれなかったらこの階層で全てを憎みながら徘徊するとかしていたりするんだろうか。
「明日は我が身な気分になりそうだ。死んだフリで幽体離脱しているのにこの階層の連中に絡まれたりしたりさ」
「幽体離脱? リエルって死んだフリしてる時、幽体離脱してるの?」
シュタインが首を傾げる。
「一応、俺はそう感じて周囲を見ているんだが? 棺桶の位置から動けないし」
「そうなんだ? ちょっとその辺りは注意しないといけないかもね。ただ、リエルの魂って確認出来たかな? 悪霊とかなら分かるはずなんだけど……」
などとシュタインは首を傾げている。
「まあ善人ならこんな所に囚われずに天に召されるんじゃない? リエルならこんな所に来ないさ」
それはシュタインなりの褒め言葉なのか?
残念ながら俺達は元々仲間だった奴等を迷宮の闇に葬っている様な連中だけどな。
正直この件で罪の意識は無いけど、善人かと言われると首を傾げたくはなる。
「ヌマー」
「では早速行こうではないか」
「そうだね。リエル」
「はいはい……って35階に入ってすぐに結構気配が多いな。先に4人パーティーって感じで人っぽいけど、なんか変な気配がある。これが悪霊って奴か?」
「この階層独自の気配だね。僕も同意見かな。注意しないといけないのはレンジャー系のアサシンタイプだと下手すると一発で首を狙われて彼等の仲間入りさ」
「把握と隠密の修練をしておかないと怖いな……」
格上の魔物を大量に倒して技能自体は大分上がっている自覚はあるけれど、俺はセカンドスキルだから上位の潜伏などをされると感知出来ない可能性がある。
シュタインとクマール頼りになりかねないのが俺自身の非力を嘆きたくなる所だ。
「それではサクッと行こうではないか。熱烈な歓迎にはこちらもこたえなくてはな」
ルナスの要望に応じて俺は早めに死んだフリを行う。
「悪霊にはこれが良いだろう? 『『ハイホーリーファイア!』』」
牽制とばかりにルナスが遭遇した直後に出てきた人影、戦士タイプ二名と魔法使いっぽい二名の悪霊を仕留める。
「アアアアァアアーー」
っと絶叫を上げながら悪霊は霧散して消え去る。
この消え方からして間違い無く人間じゃないと証明してくれる……俺の認識違いで冒険者をルナスに仕留めさせてしまったとかでなくて良かった。
そしてルナスのハイホーリーファイアが相性が良いのも当然か。
聖なる炎は霊体を持つ魔物に対して特に効果的だからな。




