125 悪霊
「生憎私は正面から挑んで倒せるぞ」
「そうだな。仕掛けも俺が前に対策で持ち込んだ代物で代用出来るし、決定打を与える装置と言っても起動させるのも狙うのが大変そうだ」
「そんな仕掛けがあったんだね。王宮の調査隊が使ったかな?」
「資料にはあるけど見つけるのが大変だし、こんな所にヒントがあっても使えるかと言うと……」
本当、迷宮は謎だ。
なぜ魔物が生息していて強力な魔物にダメージを与える仕掛けがあるのか……神が与えた試練説があるけど、こんな代物があるとそう考えた昔の人の気持ちもわかる。
なんて形で34階内をくまなく探索して回った。
周辺把握が出来るスキル持ちが揃っているとその分、探索も楽に出来るもんだ。
シュタインの隠密の精度が高くて俺が感知出来ない事とかもカバーして貰えている。
当然ながら道具や装備品、素材なんかを手に入れた。
「もう一通り回ったし、そろそろ35階に行った方が良いんじゃない?」
シュタインが早く先に行きたいとばかりに急かしてくる。
「そうだな」
「次の階層はどんな物なのかリエル、君は調べているんだったな。どんな場所なのだ」
「研究所の様な構造の迷宮タイプ、若干呪い系の罠が多めで宝とかも呪いが掛かっていたり悪魔が関わっている品が良く見つかる階層だな」
「ほう……」
「特徴としては半透明な霊体型の人型魔物が出現する階層で、ウォーリアーとかウィザードとか……対人戦をしているような気分になる所だそうだ」
「悪霊という奴だな」
「そうだね。ここで過去に迷宮で行方知れずになった冒険者の霊を見たなんて話も聞くね。非業の死を遂げたとか恨みを持つ死者の霊がここに集まっているんだとか言われたりしてるよ。ただ、幾ら人型の悪霊とは言っても会話は通じない事が大半だからね」
シュタインが俺の説明に補足してくれる。
「知人の姿に似せて現われるドッペルゲンガーとも言われているからどこまで正しいかわかったもんじゃないね。正直、ここで仮に悪霊から何かしらの証言を得ても王宮は証拠として判断しないって階層だよ」
「そう聞くといろんな闇を抱えてそうな場所だな」
「どうなんだろうね? 僕も一度だけ来たことあるけど、出てくる相手と会話なんて成立した事は無いよ。叫んでいたり恨み節をブツブツと言っていたり、自我のない人形みたいに生きている者に襲ってくるとか種類は様々な感じだったけどね」
シュタインは手をぶら下げた感じで上げて驚かそうってポーズで更に話を続ける。
「まあ一説だと謀殺された冒険者の霊達がここに辿り付くなんて言われてたりするけどね。武器とかも見つかるから残留思念だなんて説もあるよ」




