123 上り坂作成
「エンシェントフリージングクイーンレオはまたいるだろうか?」
「探せばいるんじゃないか? 割と生息地は同じだし」
「ふむ……ちなみに他に大物はいないのか?」
「ブリザードデスシザーとか探せばいるだろうな」
吹雪の中を動き回る大型のカニ型の魔物で、視界が良くない所で冒険者を雪の中から挟み込んで強靱なはさみで両断する魔物だ。
甲殻が硬くて仕留めるのに苦労するという情報がある。
「では見つけ次第仕留めるぞ。全力で行って良いのだろう?」
「まあ……」
「えーっと、あっちにそれっぽい気配があるよ」
「ヌマヌマ」
とシュタインとクマールが俺より先に件の魔物の居場所を特定してしまった。
のだけど……行く先は断崖絶壁だった。
迷宮内とは言っても上下が激しい場所はある。
単純に崖を登って行く訳だけど、空を飛ぶ魔物とかに襲われると非常に対処が面倒臭い。
何だかんだここは迷宮34階な訳で、パーティーで来れる人だって苦戦する場所なんだ。
勇者の怒り状態でないルナスだと危険だ。
「この程度の崖、私からしたら造作も無いぞ! 容易く登り切ってみんなを引き上げてくれる! リエル!」
「なんでも巻き込んで行くなー……」
「むしろここは魔法の威力を調整して崖を上り坂にして行けば良いんじゃない?」
シュタインも何を言っているんだ。
「うむ。名案だな」
ごり押しって言うんだと思ったけど登るのは大変なので黙る事にした。
「はいはい。じゃあルナス、任せたよ」
って事で死んだフリを行う。
「よーし! 任せろ、加減をしてできる限り収束しながらのブレイズ!」
ボウ! っとルナスが炎の魔法を使うと鋼鉄の如く硬い凍った岩肌が焼けて溶け崩れ、道へと変わって行く……。ルナスの前に34階の迷宮構造は屈してしまったようだ。
「ではどんどん坂道を作って快適に登るぞー! わはははは!」
ゴーッと、ルナスは登りやすそうな傾斜でどんどん道を作り上げ、仕上げに道を氷の魔法で固めて道を作り上げてしまった。
「では行くぞー」
「便利だねーなんでも力業で解決だ。僕だったらフレッシュゾンビ状態のリエルの背中のリュックに入って崖を登らせたかな。もちろんリュックの中身を後で回収させてだけどね」
「お前な……」
ルナスの頭悪い方法とシュタインの奴隷の如き扱いだったらどっちが良いかと言ったら前者だろう。
「ヌマ」
クマールも俺と同じ意見なのか困った顔をしているのが印象的だったな。




