120 職業名
「リエル、私は君を信じているぞ。だから諦めるな。私達は君の死んだフリがあるだけでも十分だと思っている」
「そうそう」
「まあ、まだ開花すらしてないスキルの話をしていたって始まらないんだ。件のフォーススキルを習得してからでも遅くないだろ?」
「うむ……」
「リエルとクマールのスキル構成から考えていつ開花してもおかしくないしね」
勝ち組構成の二人の期待に応えられるか怪しいけれど、こう……物語だとフラグって奴であり得るのが非常に怖い。
お約束にならない事を祈るばかりだ。
「どっちに転んでも落ち込まずに、という事だな」
「そうそう。それでリエル、もしもの話だけどフォーススキルが好きに選べるならどれに開花したいと思っているんだい?」
シュタインの台詞に考える。
フォーススキルで開花したら嬉しいスキルか……過去の事例で勇者となった人とかだと神聖剣ってスキルがあったっけ。
勇者と名乗れる位の強いスキルで考えると単純に勇者って名前のスキルは汎用的に強力だっけ。
職業の名を持つスキルは内包している効果範囲が広いのに強力なんだ。
シュタインの墓守も色々と範囲が広くて強力だろ?
ルナスの勇者の怒りってのも職業名が付いているって意味で同じだ。
更に仲間が死ぬとパワーアップするって効果が付いている訳だし。
もちろんマシュアの持っていた光の導き手みたいなスキルが劣っている訳ではない。
職業+更に特化したって形で強い訳だし。
光の導き手の場合は光系の魔法をより広範囲に使えるし、導く……案内するって事で魔力の流れを効率的に扱えるって事でもある。
「無難に職業名のスキルが欲しいな」
「具体的には? やっぱり夢は大きく勇者とかかい?」
「子供の頃には憧れるもんだな」
「そうだね。スキルを授かる前は、みんな憧れる職業スキルだよね」
スキルというのは人生を左右する程大事な要素で14歳になった時に教会で祈って授かる、開花する奇跡だ。
子供の頃はみんな何になるのかって色々と夢を見るわけだけど、その中で一番はやっぱり勇者だろう。
教会でもその辺りは推奨している節があって、神様が認める程の勇気を持っているとかなんとか。
「子供の頃はせめて回復魔法が使えるスキルが欲しいとは思ったな」
「まあ、リエルはそうだよね」
「なんだ? また幼馴染にしかわからない話をする気か? ハブるならしっかりと話してもらうぞ」
「……そんな大層な事じゃない。それに今更授かってもな」
結果的に俺が授かったのは死んだフリな訳で、その所為で色々と嫌な目に遭って今に至った訳だしな。
正直、恵まれているって自覚はある。
なんせ最強の勇者様と無敵のネクロマンサーが味方にいるんだからな。
「リエルは回復魔法を授かっても今更遅いと……」




