118 罠無効ゾンビ
「リエル達って今回はどんな依頼を受けて潜った感じ?」
「36階のファイアージュエルドラゴンの心臓と核石入手」
「かなりの高難易度依頼を受けたね。ぱっと見だとリエルとルナスさんだけじゃ無謀って次元だね」
クマールが人員に入っていないのは、しょうがない。
戦力としてクマールは計算出来ない訳だし。
「リエルがいるのだぞ? 私なら出来る」
「出来るだろうねー。もう一気に潜って仕留めて戻るくらいなら簡単だと思うよ。だけどそれよりも先に行く方が将来を考えたら良いと僕は思うな」
「もちろん通過点だ。それより先は潜れる所まで行って戦利品で達成報告が出来るように計算している」
「ちなみにリエルはどこまで想定してるの?」
「40階層くらいまでは行けるだろうって事で情報は集めてある」
「もっと潜れない? 念には念っていうけど、保険を掛け過ぎだと思うよ」
なんかシュタインにダメ出しされてしまった。
「冒険者たるもの念には念を入れて挑むのが鉄板じゃないか」
「そんな次元じゃないと僕は思うんだけどな。件の勇者ドラークだってグレーターデーモンを一撃で仕留めるなんて出来ないよ」
「もう私達は40階に挑む事が出来ると少年は言いたいのだな」
「当然でしょ」
「それは十分にレンジャーとか魔法使い、人員が揃っているパーティーの話だ。俺は自分の把握の性能に絶対の自信を持ってない」
迷宮ってのは潜れば潜るほど魔物以外に罠も嫌らしくなってくる。
それこそ即死するような厄介な罠や場所が分からなくなるような転送の罠なんかがどこからともなく仕掛けられていたりするんだ。
実際、ちょっと前にシュタインの隠密を感知できなかった訳だし。
「心配性って事かな。そこまで心配しなくてもさ、リエルがゾンビ状態で先に歩いていればどんな罠が作動しても無意味になるんだから平気でしょ」
無敵ゾンビは罠が来ても問題ありませんってか?
矢が飛んできても俺が無敵だから受け止めるし落石の罠があっても力業で解決って……。
「私もいるのだぞ!」
……この二人の前に罠は意味を成さないと言う気だろうか?
「それにリエル、大事な事を忘れてるよ」
「何を?」
「僕も隠密持ちだから罠の感知は得意さ」
ああ……そりゃそうだな。
シュタインの隠密は器用貧乏の把握よりも潜伏や文字通り隠密行動に関する能力が高いスキルだ。
罠の発見率は俺よりも高い。
セカンドスキルらしいので、俺達のパーティー内でシュタインの隠密に敵う可能性があるのはクマールのファーストスキルの把握くらいだろうか。
それも把握という微妙なスキルなので辛うじてって次元だろう。




